いつかはBob Jamesの曲を

我が家にはRhodesピアノが2台ある。一台はRhodes Stageでもう一台は、Rhodes Suitcaseだ。なぜ、2台も持っているかというと、これはもう道楽の世界で、実際のところ本当に2台も必要なのかは怪しいところなのだけれど、トレモロを楽しむためにはどうしてもSuitcaseが必要になるし、書斎に置くにはStageが丁度良い。

それで、2台ある。

なぜ、シンセに入っているローズの音源ではダメなのかというと、これはもう、ローズを触ってみたことがある人にしかわからない世界である。生のローズにはそれにしかない感触がある。特に木製鍵盤のRhodesは格別である。

私はRhodesピアノの音が好きで、いつも、聴いていたいぐらいだ。とくに、Bob Jamesの弾くローズの音は良い。彼がどのモデルでレコーディングしているのかは知らないけれど、彼のローズの音には、彼にしか出せない何かがある。あの音はスーツケースでしか出せない。したがって、スーツケースはどうしても必要なのだ。

それでは、ローズで何かを弾けるのかと言われれば、何も弾けない。私は、鍵盤楽器はほとんど弾けないのだ。

いつかは、ボブジェームスの曲を一曲でも弾けるようになりたいものだ。

ゴミ同然で手に入れたGretsch 6117

約10年前に、1964年頃製造のGretsch 6117、いわゆるDouble Anniversaryを楽器屋で発見した。その時は、ボロボロで、ゴミ同然の状態だった。ネックはかろうじてボディーにくっついていたが、いつ取れてきてもおかしくないような状態だった。

楽器屋に値段を聞くと、まだ値段はつけていないという。

値段が付いていないのでは仕方がないので、そのまま帰ろうとしたのだが、なんとなく不憫に思い、もし値段が出たら教えてくださいと一言伝えて、連絡先をおいて店を出た。きっと15万〜20万ぐらいにはなってしまうだろうな、と思っていた。その頃比較的綺麗な60年代のグレッチのアニバーサーリーはだいたい25万円ぐらいだった。

数日が経って、仕事をしていると、携帯電話が鳴った。楽器屋からだった。電話口でそのグレッチの値段を言われた時、思ったよりも安かったので、驚いたのを覚えている。

「ただ、状態が酷いんです。もはや楽器として機能しません。その上での値段です。」と伝えられた。

その日、仕事帰りに楽器屋まで飛んで行った。楽器屋で改めて見てみると、その楽器は酷い状態だった。ピックアップは最近のフィルタートロンに交換してあったのだが、どちらも高さが合わなかったらしく、ブレーシングを削って、大きなキャビティーを開けてピックアップがマウントしてあった。そのため、ブレーシングは折れる寸前で、出てくる音もガラガラという酷い音だった。

それでも、楽器屋にお金を払って、ギターを梱包してもらい店を出てきた。

そのあと、10年間のうち、2回ほどネックを取り外してリセットした。60年代のグレッチのネックジョイントの工作精度はひどく、いくらリセットしても、所詮は素人仕事、何度やっても起きてきてしまう。

今も、いつ何時またネック起きが始まるかはわからないけれど、弦を張り、2日が経過した。その間に、ネックの反りを直し、フレットを磨き、なんとか音が出るようにまで回復した。

ブレーシングはスプルース材で埋木してキャビティーのようになっていた箇所は直したのだけれど、まだガラガラという音しか出ない。それでも、買ってきた当初よりはだいぶマシになって、一応ハコモノの音が出るようにまでなった。

ピックアップは10年ほど前にヴィンテージのハイロートロンとディアルモンドの安物に付け替えたままだが、かろうじて良い音が出ているので、そのままにしている。

これ以上、このギターにお金をかけるわけにもいかないので、今できる調整だけしているのだけれど、いまでも、いつ壊れてきてしまうかはわからない。

ライブに使えるわけでも、練習に持っていけるほど頼りになるわけでもないけれど、大切な私の相棒。Gretsch 6117.

フラメンコを少々 Tomatito

先日、従兄弟から電話があった。

従兄弟から電話がくることなど、滅多にないことなので、私は不謹慎にも誰か親戚が亡くなったのかと思ってしまった。だいたい、滅多に連絡がこない人からの電話は、よくない知らせのことの方が多い。今回も、またそのような知らせかと思い、焦るような、諦めるような気持ちになり、電話を取った。

すると、電話の向こうの従兄弟はそれほど緊迫した様子でもない。むしろ、急ぎの用ではないというようなことを言うではないか。久しぶりに電話をかけてきて、急ぎの用ではないということは、日常では滅多に起こらないことである。大抵、急ぎの用でないときは、手紙などを書く。しかしながら、手紙ではなく電話なのだから、ある程度は急いでいるのだろうとタカをくくっていたが、実のところ、本当に急ぎではないようだった。

どうも話によると、従兄弟の息子さんがこの度ギターを始めるという。それにあたり、どのようなギターを買い与えれば良いかの相談だった。私の得意分野である。実のところ、恋愛とか相続とかの相談とかでなく、楽器の相談で安心した。楽器の相談以外では、私はほとんど役に立たない。親戚の中でも、私ほど相談のしがいのない人間は珍しい。

それで、息子さんは何ギターが弾きたいのですか。エレキギターですか、クラシックギターですか。と尋ねてみるも、いや、それは息子に聞かないとわからないという。無理もない。ギターについてズブの素人に、何ギターですかと聞いてもわかるわけがない。

フラメンコギターです。

と答えが返ってきたら、どうしようかと思った。フラメンコギターは専門外である。コンデエルマノスぐらいしか知らない。

運良く、息子さんはクラシックギターを嗜むつもりらしい。

クラシックギターならば、19,800円ぐらいからありますよ。ありますけれど、大人が弾いて満足するようなギターはだいたい20万円ぐらいからでしょうね。子供の練習用だと、まあ5〜8万円ぐらいを考えておくといいかもしれません。と回答すると、

え、ギターってそんなにするのかい。それは、まいったなぁとのことである。まいるのはこちらである。19,800円のギターで満足されていては、私の生業は成り立たない。せめて、20万円ぐらいは覚悟してもらわないと。

一度、いいギターの音を聞いてもらって、その上で判断してもらった方が早そうだ。

それで、今夜はトマッティートを聴いている。当代きってのフラメンコギタリストである。パコデルシア亡き後、彼とヴィセンテアミーゴぐらいしか、私はギタリストを知らない。

トマッティートの音は、乾いていて、なんとも悩ましい音がする。この、カラッからに乾いているようでいて、ずっしりくる音圧は、なんなんだろう。ギタリストたるもの、このようなずっしりとした存在感をギター一本で出せなければいけない。

指が回るのは、それはフラメンコを志しているのであれば、もちろん必須の条件なのだけれど、トマッティートはそれに加え、このガラスを砕いたようなギラッとしたラスゲアードや、そもそも、何を弾かせても、ずっしりくる感じとか、彼のサウンドがある。指の力がよっぽど強いのだろう。クラシックギターの連中にはこうはできまい。

トマッティートには、今後もこのような凶暴でいて、さっぱりしていて、哀愁などとは無関係な音楽を続けて欲しいと思っている。

John HugheyとThe Time Jumpers

Western Swingの名盤と言えば、Bob willsのThe Tiffany Transcriptionsが決定版だと思うけれど、そういう古いのではなくて、今を生きるミュージシャンのアルバムも忘れてはいけない。

もちろん、Asleep at the Wheelのアルバムはどれも素晴らしく、Bob Willsと並べられて語られるほど、今現役のバンドとしては最高峰なのだろうと思う。けれど、Asleep at the Wheelが上がるだけで、なかなか次が上がってこない。

そこで、自分のCDラックを見てみたのだけれど、バリバリのウェスタンスイングのアルバムと言うのが、あまりない。最近はあんまり流行らないのか、それともBob Willsのバンドが決定打だからそれ以上のアルバムを作るのが難しいのか、真相はわからない。

ナッシュビルの凄腕ミュージシャンが集まってやっているバンドでThe Time Jumpersというのがいる。この、方々のアルバムは、どこかちょっとウェスタンスイングの香りがして、なかなか素晴らしい。

私は、アルバム一枚しか持っていないのだけれど、ペダルスティールのPaul Franklinがいい味を出している。

この Paul Franklinは当代きっての名手なのだ。The Time JumpersでもVince Gillと共演しているけれど、Vince Gillとベイカーズフィールドカントリーのカバーアルバムを出していて、そこでも凄腕ぶりを発揮している。

The Time Jumpersのスティールギターと言えば、名手John Hugheyがかつて在籍していた。彼のスティールギターは、とても味わい深く、特にバラードを弾かせると右に出るものはいない。

YouTubeでJohn HugheyがThe Time Jumpersと名曲Sweet Memoriesを弾いている動画を見ることができるけれど、このスティールソロが素晴らしい。スティールソロはもちろんの事、歌も含めて、その演奏自体が素晴らしくて、観ていると必ず感動してしまう。

The Time Jumpers、もっとたくさんアルバム出してくれないかな。特に、カントリーの名曲集のカバーアルバムなんかを出してくれたら、嬉しい。

いつかはLeon McAuliffeのように

Leon McAuliffeというスティールギター奏者がいる。このブログでも何度か紹介したような、していないような。Bob Willsのバンドでスティールギターを長い間弾いていた名手である。

Bob Willsのバンドを去った後も自身のバンドを引き連れふるき良きウェスタンスイングを演奏し続けた。彼の音楽は、明るく前向きで、さすがはウェスタンスイング、時にジャジーで時にカントリーテイストありの盛りだくさんの音楽である。

彼は、クアトロネックの8弦スチールギターを演奏していた。彼のチューニングは、幾つかのウェブサイトで公開されているけれど、ジャズの複雑なコードワークを難なくこなしてしまうわけだから、かなり凝ったチューニングだ。

ウェスタンスイングではA6thチューニングを使うことが多いらしいのだけれど、A6thチューニングの教則本は私の知る限りすぐに手に入るようなものは出ていない。Leon McAuliffeの場合は、他に3本もネックがあるからそれぞれのチューニングをマスターするのは相当至難の技だろう。

私は、彼の演奏が好きで、彼のように自由自在にスティールギターを弾けるようになれればと憧れはするのだけれど、とうてい無理な相談だ。それでも、スティールギターは好きなので、スタンダードなC6thチューニングで練習している。

ずっと8弦の楽器で練習していたのだけれど、この度6弦の楽器を弾いてみたら、やっと少しずつこのチューニングのメカニズムがわかってきた。いや、わかってきたような気がする。弦が2本減るだけで、できることはうーんと狭まるのだけれど、その分シンプルになって弾きやすくなった。教則本を見るときも、弦の数が2本減ったので、めっぽう教則譜を読みやすくなった。

この調子でいくと、もう少しで曲を一曲弾けるようになりそうだ。

新しい楽器で曲を弾けるようになるという喜びを久しぶりに味わっている。いつか、死ぬまでにはLeon McAuliffeのフレーズを自由自在に弾けるようになりたい。

6弦、8弦それぞれの魅力 Fender Steel Guitars

大は小を兼ねるというので、スティールギターも6弦より8弦、8弦より10弦の方がすぐれているように思っていたのだけれど、思いがけなく6弦のスティールギターを弾いてみたら、これがまた奥が深い。

ついつい、手に入れてしまった。Fenderの Studio Deluxe。

8弦の方ができることは多いのは確かなんだけれど、Studio Deluxeは弦が少ない分だけ覚えやすい。ペダルスティールギターなんかは10弦もあるから、世界中のあらゆるコードを鳴らせるんだけれど、そのコードを覚えるにも、複雑すぎて頭がついていかない。

ここはスティールギターの基本、6弦の楽器を練習してみようと思い立ち弾いてみると、少しだけシンプルなので面白い。シンプルと言っても、バーのスラントをすればメジャーセブンスも鳴らせるのだから、これはこれでそこそこ複雑だ。

大橋節夫はこの楽器で世界を制覇したのだから、私だって世界制覇とまではいかなくてもある程度マスターすることができるのではないかという夢を与えてくれる。

これから、頑張って少しずつ練習していこう。