さよならMarlen

MarlenのS−10、ペダルスティールギターを売却した。

勿体ないことにあまり弾いていなかった。楽器に申し訳ない。Marlenはわたしにとって初めての本格的なペダルスチールギターだった。ウォルナットマイカのボディーが渋かった。

結構いい金額で売れた。それだけでも嬉しい。

Marlenといえば、かの Speedy Westが晩年愛用していた。もっとも、Speedy Westのことだから、レギュラーのE9/C6セットアップではなかっただろうけれど、なかなかあれはあれでカッコイイギターだった。

いつだったか、職場でアメリカの関係会社の人に、最近何をしているか、ギターは練習しているのかを聞かれ、最近は専らペダルスティールギターばかり練習している(練習していた時もあった)と答えたら、

ペダルスティールギターっていうのは、とても難しい楽器だけれど、マスターしたところで女の子に追い掛けられるような類いの楽器ではないな。

と言われた。

彼は、カントリーのバンドを組んでいて、メンバーにはペダルスティールプレーヤーも居たから、決して馬鹿にして行ったわけではないだろうけれど、本当に彼の言う通り、難しい楽器であることは確かだが、上達したからってモテるようになるような楽器ではない。

むしろ、なんだか椅子に座って弾く楽器なので、「暗い」。それに、とてつもなく重い。この楽器を持って移動していると、なぜ自分はこんな因果な楽器を弾くようになったのかと思えてくる。

そもそも、ペダルスティールギターを弾くようになったのは、カントリーのバンドのリーダーがペダルスティールプレーヤーだったからなのだ。彼が奏でるペダルスティールの音は、ギターでは全く真似できなくて、複雑なコードをいとも簡単に鳴らしていて、かっこよかった。リーダーはもともとハワイアンの人だから、C6ネックを魔法のように鳴らすことができるのだ。

カントリーを奏でる際にペダルスティールギターから出てくる、ジャジーなコードに憧れたものだ。

ジャジーなコードはC6ネックの専売特許のように思われているかもしれないが、ロイド・グリーンなんかは、E9のネックでいとも簡単にジャズのフレーズやコードを鳴らしている。やっぱり楽器ではなく、腕の問題なんだろうな。

E9のペダルスティールギターはシンプルなようでいて、なかなかこれで奥深い。奏法を身につけるのが難しいことには変わりないが、C6よりも直感的に弾くことができそうな気持ちにさせてくれる。

私が持っていた Marlenの楽器はE9のシングルネックの楽器だった。プロでも使えるクオリティーの楽器で、ニーレバーは4本付いていた。ネックはアルミニウムで、その長いサスティーンは、それまで使っていたEmmonsのエントリーモデルとは一線を画していた。(Emmonsもなかなか良い音がするけれど)

この楽器で世界を変えてやるんだという勇ましい気持ちにさせてくれる楽器だった。

このMarlenの楽器をなぜ売却したかは、後日レポートします。

古の栄光たちHamer USAとPeavey Vintage

私は、ギターも最近はほとんど弾くことがなく、ただ眺めているだけである。

先ほど、きまぐれにギターを弾こうと持ってみたが、左手の力が弱くなってしまったのか、コードをおさえるのがやっとで、チョーキングができなくなっていた。ピッチがきちんと上がらないのだ。

そういえば、最近は楽器に触るというとペダルスチールばかりで、ギターはほとんど触っていなかった。仕方ないことである。

書斎に今はHamer USAの古の名器 Sunburstがあるのだが、このギターはミディアムスケール(ギブソンスケール)なので比較的弾きやすい方のはずなのだがこの体たらくである。そのうちコードすら押さえられなくなるだろう。これではいかんな。

アンプは、70年代の Peavey Vintageというアンプを置いている。これも、古の名器で100ワットのチューブアンプである。プリアンプはソリッドステートで、歪ませると邪悪な音がする。さすがは Peaveyである。フェンダーのアンプとはわけが違う。

私が中学生の時、父にギターアンプを買ってもらった。Peaveyのクラシックというアンプである。確か15Wだったと思う。それを購入してもらった際に、フェンダーの5Wアンプと大いに迷った。しかし、フェンダーの方は値段が1.5倍ぐらいしたのではないかと思う。なので、実質迷うも何も始めからPeavey一択だったのだろうが、それでも幼心に(幼くもないのだが)大いに迷ったきがする。

お店の人にPeaveyと Fenderで迷っているんです。と伝えると、Peaveyの方の歪みはFenderのような歪みではないですよ。と言われたのを覚えている。私は歪ませる予定はなかったので、そんなことどうでもいいと思い、結果として安くて大きな音がする Peaveyを父親に買ってもらった。

正解だった。

大人になって(それもかなりおっさんになってから)フェンダーのアンプも数台購入したが、フェンダーのアンプは育ちが良い音がするので、上手い人にはいいのかもしれないが私のような人間には、Peaveyの邪悪な音の方が合っているのかもしれない。

何と言っても、このHamerのようななんとなくやんちゃなエレキギターをつないで弾くには、Peaveyの歪みの方が合っているような気がする。いや、実のところフェンダーにつないでもいい音はするのだが、Peaveyの方が時代考証的に正しいような気がする。

この78年製のHamerはヘビーメタルの出始めの時代に作られたのだ。まだ世の中に今のようなバリバリに歪むハイゲインアンプはなかったけれど、フェンダーのような奥ゆかしいサウンドも時代遅れになっていた頃のものである。同世代の楽器同士で鳴らすと、それっぽい音になる。

それっぽい音になったからといって、それで何を弾くというわけでもないのだが。