なんの心配もなしに聴けるピアノトリオの名盤「Misty Red」

Red Garlandについては、ここで何度か書いたことがあるけれど、ジャズのピアノトリオで一番たくさんCDを持っているのはレッドガーランドかもしれない。

そもそも私はあまりピアノトリオを聴かない。ジャズは好きなので、CDもたくさん持って入るのだけれど、ピアノトリオのCDはビルエヴァンスとエロルガーナーと、レッドガーランドぐらいで、あとはあまり持っていない。

なぜ、ピアノトリオを聴かないのかは自分でもわからないのだけれど、長らくピアノの音が苦手だったせいもあるかもしれない。私は、以前ピアノ屋で勤めていたのだが、勤める前まではピアノ音楽は殆ど聴かなかった。ピアノの音がどうも好きになれなかったのだ。

仕事の関係で幾つか聴いているうちに、なんとか我慢は出来るようになった。クラシックも、ジャズも、少し聴くようになった。ピアノ屋がピアノ曲の一つも興味がないというのは、やはりちょっとまずいかなと思って最初は聴いていたのだけれど、聴いてみると、これはこれで全くダメというわけでもない。

まあ、ピアノを弾かない一般の方がわざわざCDを買って聴くような音楽は少ないが、その中でもなかなかいい音楽がある。

Red Garlandはそのうちの一つで、ジャズが苦手な方でも、ピアノが苦手な方でも、彼のピアノトリオの作品の中に一枚ぐらいは気に入るレコードがあると思う。レパートリーは広いし、極端に前衛的なこともしない。いつも安定していい演奏を聴かせてくれる。

今日聴いている彼の演奏もなかなかいい。

昨日、西新井のブックオフで購入した「Misty Red」という日本企画盤のピアノトリオ作品だ。結構晩年の作品に当たるのではないかと思うけれど、若い時から変わらず、落ち着いてスイングする彼のピアノを聴くことができる。タイトル曲のMistyもいいけれど、ここでは全てスタンダード曲が演奏されているので、どのトラックから聴き始めても悪くない。

このCD、存在は知っていたのだけれど、日本企画盤ということもあり、購入するのをちょっとだけ躊躇していた。日本企画盤には、独特の胡散臭さがあるからだ。よく言えば完成度が高く聴きやすいようになっていて、悪く言えば、どうも優等生すぎておもしろくない演奏のレコーディングが多いのだ。

しかし、よく考えてみれば、これはレッドガーランドのCDだ。危なげない演奏に決まっている。彼は、そういう名手なのだから。

Rhodes Suitcaseのパワーアンプを修理した

Rhodes Suitcaseピアノには2つのパワーアンプが内蔵されていて、外部機器をつないで音を出せるようになっている。2チャンネルあるうちの片方を使ってローズを鳴らし、もう片方で外部のシンセサイザーなりなんなりをつないで鳴らすことができるのだ。

今まではローズだけで使っていたので、特に不便はなかったが、この度Hammond organが私の書斎に来たので、それまで使っていたデジタルのハモンドをリビングに持って行き、Rhodesにつないで使うことにした。

それで、試しにつないでみたのだが、どうも音が出ない。調べてみると、片方のチャンネルのパワーアンプが故障しているようであった。ローズスーツケースのパワーアンプはトランジスタアンプで、ずいぶん古いトランジスタが使われているので、簡単には直せない。パーツがないのだ。デジタルハモンドをつなげるのを諦めていた時、Vintage Vibeでローズのパワーアンプ修理キットを発見した。

迷わず購入してみたところ、これがまたかなりシンプルなキットで、トランジスタ7つと、抵抗2つ、電解コンデンサー2つだけのものであった。その他の部品については、各々で調達して直せということらしい。

とりあえず、どこが故障しているかもわからないので、すべてのトランジスタを交換してみた。ついでに、抵抗と電解コンデンサもキットについてきたものは全て交換してみた。

もう一度、組み直してみても、音が出ない。

これは困った。大枚をはたいて買った修理キットの意味がなかったのか、と諦めていたところ、インプット側の端子をいじっていたら、奇跡的に音が出た。ただし、音が出たり出なかったり。

よく見てみると、どうやら接触不良らしい。やれやれ、もしかしたら、はじめから単なる接触不良だったのかもしれない。けれども、たしかに音が出たので、接触不良を修理し、再度つないだところ、両方のチャンネルから音が出た。

これで、ローズにデジタルハモンドをつないで使うことができる。何はともあれ Vintage Vibe様様である。

ローズのパワーアンプの修理だけで土曜日の午後の全てを使ってしまったが、とりあえず治って音が出たので良しとしよう。あのキットさえあれば、たとえ、もう片方が壊れてしまっても修理ができることがわかっただけでもよかった。

ちなみにVintage Vibeのキット、出力トランジスタ付きのキットと、出力トランジスタなしのキットがあり、私は、念のため出力トランジスタありの方を買った。けれども、よく考えてみたら、出力トランジスタは壊れていなかったので、なしの方でもよかったのだけれど、あのローズのトランジスタ、今買っておかないと無くなってしまってはいけないので、とりあえず手元に置いておこう。

Vintage Vibeいつまでもパーツを供給し続けてくれますように。

サイクルチェンジャー要らず

Hammond B3は117V 60Hzで使うようにできているらしく、東京の50Hz環境で使うためには周波数変換機というもの、いわゆるサイクルチェンジャーがなくては使えない。誠に困ったものである。そうでなくてはA440のピッチに合わなくなってしまうのだ。

しかし、私の家に入れたハモンドにはサイクルチェンジャーが付いていない。どうしたものか、困ったものである。これでは本当は50Hzで使うと大体短3度低い音程になってしまうというのだ。しかし、一応A440のピッチで音は出ているようだ。

気になって、油を注すついでに裏を開けて見てみた。

ハモンドオルガンの中身を見るのは初めてである。どこがどのように改造されていても、私は気付かない。油を注すインストラクションを見ながら、油を刺そうとすると、Runモーターのあたりがインストラクションと随分違うのだ。

見たことのないモーターが増設されている。そのモーターから、トーンジェネレーターのシャフトにベルトがつながっている。確かハモンドは、モーターのダイレクトドライブじゃなかったっけ、などと思いながら考えてみると、これは50Hzに合わせて鳴らすための改造である。

なんと、サイクルチェンジャーを増設するのではなく、モーターを変えているのだ。世の中に、このような改造を施してあるハモンドは一体何台ぐらいあるのだろう。きっと珍しいだろう。

あいにく、オイルを注すので一生懸命になってしまい、モーターの写真を撮るのを忘れてしまったが、こういう力技で、解決する方法があったかと、目から鱗であった。

ノイズの原因は、そのベルトドライブの部分でもあったようだ。とりあえず、Hetmanのチューニングスライドグリスを塗っておいた。普通のハモンドオイルでは、すぐに油ぎれを起こしてしまうからだ。果たして、これでいいのかわからないけれど、モーターノイズは一旦収まった。

Hammond organの動作音が静かになった。

昨日、自宅にハモンドオルガンを搬入したのだが、電源を入れるたびにモーターの音がブンブンうるさくてどうも気になっていた。

ハモンドオルガンというのは、このぐらい雑音がするものなのかと諦めていたが、聞いているとその雑音がどんどん大きくなっているような気がして(気持ちの問題なのだろうけれど)気になっていた。どうも、カタカタがしていた。

カタカタの原因はわからないのだけれど、インターネットで調べると、同じような悩みを抱えている人がいて、やれ、モーターの不具合だとか、やれスタートモーターが壊れているだとか色々と書かれていた。

モーターが壊れてしまっていてはどうしようもないので、これは諦めるしかないかと思っていたのだけれど、まだ望みは捨てないでいた。

幾つかの記事を読んでいるうちに。油をさしたら治ったという記事があったので、これはいっちょもう一度油をさしてみるべか、と思い立ち、ハモンドを移動して油をさし直した。昨日から3回か4回は油をさしている。その度にハモンドを移動するのだけれど、これがなかなか大変なのだ。

Hammond B3は200キロぐらいある。その巨体を動かすのは並大抵のことではない。まず、レスリースピーカーをどかせる。これが60キロぐらいあるので、うまいこと動かさないと、壊れてしまうのだが、持ち手のようなものが付いていない。レスリーは、据え置きで使うようにできているのだろう。持つところのような便利なものは一切ついていない。だから、できるだけ床に傷がつかないようにゆっくり動かすのだ。

レスリーが移動できたら次はハモンドを動かす。隣においてあるアップライトピアノに傷がつかないように、ぶつけないように動かさなくてはいけない。200キロの楽器を一人で引っ張ったり押したりするのはこれがまた大変。

なんとか動かすことができて、ハモンドのオイルを注入した。

いかんせん、10年以上オイルをさしていなかったものだ。普通なら1ozぐらいさせばいいと書いてあるのだけれど、ちょっと多めにさしておいた。昨日までは1ozずつさしたところに、今日はさらに半オンスさした。モーターのベアリングにつながっているところに重点的にさした。すると不思議なことに、少し動作音が静かになった。

良かった。

とりあえず、ハモンドでは一曲も弾けないのだけれど、ちゃんと動作するようになったのだから嬉しい。このハモンドは借り物なのであんまり無茶なことはできないのだけれど、オイルを注すぐらいはやってあげないと壊れてしまっては大変だ。とにかくインターネットに書いてあった通り、オイルをさして良かった。

Hammond B3がやってきた

入るかどうか、が入ってきたところで置き場所があるのかないのか、心配していたHammond B3とLeslie122RVがなんとか部屋に収まった。

ハモンドについては、あらかじめどこに置こうか考えていたのだけれど、レスリースピーカーについては、事前に考える余裕がなく、運送屋さんに、どこに置きますか、と言われても、はて、どこに置こうかと考えてしまう始末。

それでも、なんとか場所を作って、部屋に入れた。

Hammond B3の電源を入れると、常にモーターの駆動音がかなり聞こえるのだけれど、果たしてこれでいいものなのか。油をさせるところにはさせるだけ油をさしたのだけれど、果たしてこれで良かったのか。

ちっともわからないけれど、とりあえず音は出た。気になっていたサイクルチェンジャーは付いていなかったけれど、何やらモーターが替えられていて、なんとかA440は出ているようだ。

まだ、何も弾ける曲がないのだけれど、さて、これから何を練習しようか。

部屋を片付けた、ハモンド入ると良いな

暑い日々が続きますが、皆様のご機嫌はいかがでしょうか。特にお変わりないでしょうか。

今年は、新型コロナとかで皆マスクをつけているおかげか、夏風邪などあまり流行っていないのか、はたまた流行っているのか、よくわかりませんが、私は元気にしております。だんだん、この新型コロナウイルスなんかにも慣れてきてしまっていて、会社は知らないうちにすっかり通常運転に戻っております。景気はどうなんでしょうかね、私の周りはすっかり景気の悪い話ばかりを聞きます。

週末なんかも、派手に出歩いたりはできないのでしょうが、昨日渋谷に散歩に行くと、以前通りの人出でした。世の中、だんだんコロナにも慣れてきたのか、これは良いことなのか悪いことなのかはわかりませんが、そもそも、良い悪いで人は行動しないですからね。

それでも、私も外出は以前よりもすこし控えめ気味にしているつもりです。この、なんでも控えめ気味ぐらいが世の中丁度良いのかもしれません。なんでも一生懸命というのも、それはそれで良いのですが、人生長いので調子良いときも、調子が悪いときもあるのは仕方ありません。

かくいう、私も、ここ1年ぐらい(いやもうちょっとかな)仕事ではスランプに陥っているところです。どうも、毎日調子が上がらない。物事に集中して取り組めない。そのせいなのかなんなのか全然ポジティブなアウトプットがない、という状態が続いております。その一方で、物欲などは衰えていないので、これは仕事だけの問題なのか、または体調そのものが良くないのかはよくわかりませんが。あんまり調子が良いのも、いままで悪い兆候だったということもあるので用心しなければなりません。

自分で、ちょっと不調だなと思いながらやっているのはなかなか辛いことですが、これがなかなか人に説明するのは難しい。そもそも、そういう悩みはわかってくれる人がおりません。人間というのは孤独な生き物だということをこういう時こそつくづく感じます。

一方で、調子が良いと本人が思っているときはもっと要注意。私なぞは調子が良いのは長続きした試しがない。調子が良いと自分で思っていると、すぐに体調を崩してしまいかえって痛い目にあいます。だから、このいまのネガティブな気分さえなんとかなれば、少し不調なくらいで仕方ないのかもしれません。

このような、不調が続く毎日ですが、ちょっと日の光が見えてくるようなことがあります。人生捨てたもんではありません。捨てる神あれば拾う神あり。といえば言い過ぎでしょうか。

実は、ある知り合いからハモンドB3を貸してもらえるかもしれないのです。Hammond B3といえばジャズオルガンの名器、オルガンの世界の金字塔です。山でいう富士山。車でいうクラウン。相撲でいう朝青龍。時計でいうグランドセイコー。トランペットでいうバック。ピアノでいうスタインウェイ。スピーカーでいうJBL。オルガンでいう、、あ、オルガンではHammond B3でした。

なんだか、国産品やらなんやらしか思い浮かばないのは庶民の悪いところです。しかし、B3は庶民ではなかなか所有することはできません。まあ、わたしも別に所有できるわけではありませんが。それでも、B3が自宅に来るかもしれないのです!!

まず、困ったのは置き場所です。なんせB3は130cm四方ぐらいの場所をとる。自宅にそんなスペースはなかったのですが、なんとか片付けてスペースを作りました。次の問題は重量。これがゆうに200kgくらいあるのです。うちみたいなぼろ家の床が耐えられるのか。不安なところです。B3だけならなんとかいけるかと思いますが、問題はその上に座って弾くということ。これだけでも、床が耐えられるのか不安なところです。それでも、なんとか置きたいと思い場所を空けました。それもできるだけ窓際の床を。

最後の問題。これが一番の難関です。

果たして家に搬入できるのか。以前のアップライトピアノの経験から、玄関入れは絶対に無理ですので、窓入れになります。これが、掃き出し窓の一つでもあれば良いのですが、悲しいかな下町暮らし。そんなものはありません。なので、1階腰窓、ユニック入れです。果たして入れれるのか、心配です。

もし、入ったところで、ハモンドを演奏できるのか、という問題はありますが、演奏できるかどうかは二の次です。

それよりも、東京の50hz電源で使える仕様になっているのか(サイクルチェンジャーは付いているのか)、そもそも音はなるのか。などと、わからないことはたくさんあります。

心配してみたとことで、家に入らなければ始まりません。それ以外の問題は、少しづつ解決することとして、まずは家に入れることからです。まあ、音が出なければ、単なる場所をとる高価な粗大ゴミですが。それも仕方ありません。ハモンドを家に入れるという夢を叶えるためには、そのぐらいのリスクは背負わなければなりません。

ハモンドの修理って、いったいいくらぐらいになるんだろう。メンテナンスっていったいいくらぐらいになるんだろう。

不安なことばかりですが、とりあえず、まずは家に入るかがさしあたっての問題です。

ハモンド、家に入ったら良いな。

いつかはLeon McAuliffeのように

Leon McAuliffeというスティールギター奏者がいる。このブログでも何度か紹介したような、していないような。Bob Willsのバンドでスティールギターを長い間弾いていた名手である。

Bob Willsのバンドを去った後も自身のバンドを引き連れふるき良きウェスタンスイングを演奏し続けた。彼の音楽は、明るく前向きで、さすがはウェスタンスイング、時にジャジーで時にカントリーテイストありの盛りだくさんの音楽である。

彼は、クアトロネックの8弦スチールギターを演奏していた。彼のチューニングは、幾つかのウェブサイトで公開されているけれど、ジャズの複雑なコードワークを難なくこなしてしまうわけだから、かなり凝ったチューニングだ。

ウェスタンスイングではA6thチューニングを使うことが多いらしいのだけれど、A6thチューニングの教則本は私の知る限りすぐに手に入るようなものは出ていない。Leon McAuliffeの場合は、他に3本もネックがあるからそれぞれのチューニングをマスターするのは相当至難の技だろう。

私は、彼の演奏が好きで、彼のように自由自在にスティールギターを弾けるようになれればと憧れはするのだけれど、とうてい無理な相談だ。それでも、スティールギターは好きなので、スタンダードなC6thチューニングで練習している。

ずっと8弦の楽器で練習していたのだけれど、この度6弦の楽器を弾いてみたら、やっと少しずつこのチューニングのメカニズムがわかってきた。いや、わかってきたような気がする。弦が2本減るだけで、できることはうーんと狭まるのだけれど、その分シンプルになって弾きやすくなった。教則本を見るときも、弦の数が2本減ったので、めっぽう教則譜を読みやすくなった。

この調子でいくと、もう少しで曲を一曲弾けるようになりそうだ。

新しい楽器で曲を弾けるようになるという喜びを久しぶりに味わっている。いつか、死ぬまでにはLeon McAuliffeのフレーズを自由自在に弾けるようになりたい。

仕事人が作った名盤「The Warm Sound」

トランペットのワンホーンカルテットの名盤は案外少ない。大抵は、もう一人サックスやトロンボーンが入っていて、ソロを回している。

サックスのワンホーンものはそれに比べたら少しは多いかもしれない。これは、トランペット好きとしてはなんとなく寂しい。トランペット一本でも十分フロントは務まるのだけれど、どうも世の中はそれだけでは満足しないような気分になる。

ライブ盤のワンホーンカルテットは比較的多いのだけれど、スタジオ盤となると、少なくなる。マイルスデイヴィスなんかは、結局ワンホーンカルテットのアルバムを作らなかったんじゃないか?いや、もしあったらごめんなさい。私のレコードラックにはマイルスのワンホーンもののアルバムはなかった気がする。

マイルスの場合は、テナーサックスとのハーモニーを使ってまるでオーケストラのような世界観を出すこともできるということもあって、あえてワンホーンもののアルバムを作らなかったのかもしれない。マイルスとコルトレーンのクインテットは、その代表例だ。いつも素晴らしい。

何年も前に、雑誌の記事で読んだのだけれど、オールマンブラザーズがデュアンオールマンと、ディッキーベッツのツインリードギターにしたのは、マイルスとコルトレーンを意識したからだとのことだった。オールマンの場合は、マイルスとコルトレーンともまた違ったレイドバックしたギターの絡みが面白いんだけれど、まあいいか。今日はそのことについては書かないでおこう。

そんな、数少ないトランペットのワンホーンカルテットの名盤を一枚紹介したい。いまさら紹介するようなアルバムでもないけれど。

ジョニー・コールズのリーダー作「The Warm Sound」。これが、なかなか素晴らしい。ピアノのケニー・ドリューもいい味を出している。

ケニードリューは、サックスワンホーンものの、デックスとかのアルバムでいい仕事をしているから、トランペットのバックでも手馴れたもんである。ケニードリューのピアノは、とくに特別なことはしないのだけれど、安定しているからいいのだろう。この人はいつも安定していて、ピアノトリオでも、危なげがないので、どうもわざわざレコードを買ってじっくり聴く気になれなかったりするのだけれど、あらためて聴いてみるとこれが、まさに理想的なジャズピアノでないか!

アルバム「The Warm Sound」に戻って、ここでのジョニー・コールズのトランペットをじっくりと聴いてみたい。ジョニーコールズはほとんどヴィブラートをかけない。マイルスデイヴィスもほとんどかけないけれど、50~60年代の流行りなのだろうか。チェットベーカーもヴィブラートはあまりかけない。ヴィブラートをかけないでジャズを吹くと、どこかモダンな雰囲気がただよってくる。逆に、40年代からのスタイルは、ヴィブラートをかけまくるからだろう。

ハーフバルブを多用するところもマイルスのようだ。トランペットの音はマイルスの音に似ているのだけれど、意識的にそうしているのかな。

しかし、一方で、小気味よくスイングしている感じがちょっとマイルスよりも古めかしくて、好感が持てる。スイングの仕方が素直、と言えばいいのか、どんどん飛び出すソロのフレーズも、マイルスの感じとは随分違う。マイルスよりも、もっとケニードーハムのようなハードバップに仕上がっている。

それでは、ジョニーコールズに個性がないように聞こえるけれど、確かにこの人は個性が強い人ではない。危なげなく、しっかりきっちり正統派のジャズを奏でる仕事人である。仕事人であるからこそ、いいアルバムを作れるのだ。

サウンドは実験的であればいいというものではない。マイルスは、常に実験的なアルバムを作り続けていたけれど、ジョニーコールズはそういうタイプのトランペッターではなかったのだろう。だからこそ、頑固にハードバップの名盤を作ることができて、実際に、この「The Warm Sound」のような名盤がうまれた。

まさに、ウォームで、楽しげなアルバムに仕上がっている。ブルース良し、スタンダード良し、バラード良しの3拍子が揃っているワンホーンの名盤です。

Dear Harmonica Friend, Toots Thielemans

Jazzではいろいろな楽器が使われる。サックスやトランペットは定番だけれど、珍しいところでは、フレンチホルン、バストランペット、チューバ、ハープ、チェンバロなんかが使われたりする。

珍しい楽器の演奏は、それだけで興味を惹くのでつい聞いてしまったりするけれど、なかなか、音楽として面白い演奏に仕上がっているものは少ない。まあ、仕方ない気もする。

そんな中にも名手というのが存在して、珍しい楽器で演奏されているということを忘れさせられるほどの音楽を奏でる。ジャズでフロントを務めるためには、音が太くて、はっきりしていて、かつある程度速いフレーズを弾くことができる楽器でなくてはいけない。フレンチホルンなどは、そういう意味で不利である。音がほんわかしていて、トランペットやサックスのようなはっきりした音に比べると、前に出てこない。

ハーモニカ、という楽器も、そういう意味だと、どうもバリバリ吹く楽器ではなさそうなのだけれど、これが案外ジャズに合う。とは言っても、私はToots Thielemans以外のジャズハーモニカ奏者は知らないけれど。それでも彼の音楽は一度聴くと忘れられない。

Toots Thielemansについて調べてみたら、彼はベルギー出身のようだ。なぜかずっとオランダ人だと思っていた。彼は、もともとジーン・シールマンスという名前で通っているギタリストだった。たしか、ジョージシアリングのバンドでリッケンバッカーを弾いていた。そんな彼が、ツアーバスの中でハーモニカを口笛のように吹いていたところ、そのハーモニカの才能が認められ、ハーモニカ奏者としても有名になった。Tootsというのは、彼のハーモニカのサウンドから取られたニックネームだ。

私は、彼のハーモニカが好きで、時々レコードやCDを引っ張り出してきて聴いている。特に、ライブ盤で「おもいでの夏」をやっているレコードが好きで、月に一度ぐらいの頻度で聴く。「おもいでの夏 the summer knows」の演奏の中で、彼のバージョンが一番好きだ。ハーモニカの独特の浮遊感と、翳りがとてもこの曲に合っている。

私が、社会人になった時、初任給をもらい、すぐに楽器屋に行った。そこで、クロマチックハーモニカを買ったのだ。それも、HohnerというドイツのメーカーのHard bopperというモデルを。なぜ、このモデルにしたかというと、まさに、これがToots Thielemansが吹いていたモデルだったからだ。それぐらい彼のハーモニカが好きだった。

嬉しくなって、家に持って帰り、ふたを開けると紙が入っていた。説明書かと思って開いてみたら(説明書が要るほど複雑な楽器ではないのだけれど)なんとそこには、Toots Thielemansからの手紙が入っていた

Dear Harmonica Friend

から始まるその短い手紙には、「自分自身とお前らのために、一生懸命この楽器を開発したから、せいぜい一生懸命練習しなさい」と書かれていた。気がする。

音は簡単に出た。

しかし、この楽器が難しいのである。五線譜を読める方々にはなんの苦労もないのかもしれないけれど、音符を読めない私にはCメジャースケールは簡単に吹けるのであるが、それ以外のスケールを吹こうと思うと、非常に難しい。

結局、まともに吹くことすらできずに、その楽器は私の部屋の片隅に追いやられてしまった。シールマンス先生、申し訳ございません。

こんなに難しい楽器だと思っていなかったので、改めてシールマンス先生を尊敬した。

そして、今でも時々、この楽器を出してきては、でたらめに吹いてみて、また挫折するのである。

Toots Thielemans数多くの名盤があるので、ぜひ、聴いてみてください。懐かしいハーモニカの音の中に、哀愁があり、ドラマがあります。

Pee Wee Russellの Ask Me Now!

Jazzに於いてクラリネットとは長い間中心的な楽器であった。1940年代までのことである。

ディキシーランドジャズでも、スイングのビッグバンドジャズでもクラリネットは花形楽器だった。特にディキシーランドジャズでは、コルネットやトロンボーンとクラリネットの掛け合いというのは定番で、音楽にスリルとエキサイトメントを加えていた。らしい。

私は、このところ何年も1950年代以降のジャズばかり聴いているので、クラリネットが出てくるジャズをほとんど聴いていない。クラリネットもののジャズで持っているのは、アートペッパーがアルトサックスの持ち代えで吹いているアルバムぐらいだろうか。

数日前に、YouTubeを見ていたら、北村英治が師の村井祐児と二人でメンデルスゾーンを吹いたりジャズを吹いたりしている面白おかしい動画があった。村井祐児はクラシックのクラリネット奏者である。その二人がお互いの専門分野を解説しながらクラリネットを吹く。

話によるとあのジャズクラリネットの大御所北村英治は、10歳ほど若い村井祐児にクラシックのクラリネット奏法を25年以上も習っているのだという。二人の師弟対決が、面白い。クラリネットという楽器を自由自在に扱う村井祐児に対して、ジャズの奏法の妙味を伝える北村英治。それを、ぎこちなくもすぐに自分のものにしてしまう勢いの村井祐児もすごい。

それで、クラリネットのジャズを改めて聴いてみようと考え、CDラックを見たところ、ほとんど持っていない。

探しに探してみたところ、Pee Wee Russellの「 Ask Me Now!」が出てきた。ピーウィーラッセルといえば、ビルクロウの名著「さよならバードランド」に何度か出てくるスイング時代のクラリネットの大御所、らしい。

このアルバムは1965年の作だから、時代はすでにスイングを過去の遺産としていたはずだ。その影響なのか、このアルバムを聴いているとそこにはスイングの香りがほとんどしない。むしろ、もっとモダンなサウンドである。それは、ハードバップのようなモダンさではないけれど、明らかにスイングジャズとは異なる肌触りの音楽である。

どちらかといえば、ウェストコーストジャズに近いか。ただピアノレスだからそう感じただけかもしれないけれど、そんな雰囲気を感じる。ここにルビーブラフが参加していても、ちっとも不思議ではない、そんな雰囲気だ。

詳しいことはわからないけれど、バリバリのハードバップに疲れた時、たまにこういう音楽を聴いてみてはいかがでしょうか。ここには、なんだかちょっと洒落ていて、少し懐かしいジャズがあります。