似合わないとわかっているロマンチズムに浸れる曲 Bill Withers「Hello like before」

Bill Withersの名前を初めて私に教えてくれたのは高校の同級生だった。彼は、従兄弟からビル・ウィザースのベスト盤を借りたと言って私に見せてくれた。その数日後、彼はそのCDを私に貸してくれた。

一曲目に「Just the two of us」が入っていて、私はCDプレーヤーをオールリピートにして、繰り返し何度も何度もそのCDを聴いた。その頃は「Just the two of us」、「Lovely day」、「Soul shadows」が好きで、それらの曲を繰り返し聴いたりもした。

大学に入り上京し、友人と二人で明け方にドライブをしていた時に、かけていたFMから「Lovely Day」がかかったことがあった。私は助手席でのんきに座りながら、この歌に耳を傾けた。この曲こそ、まさにこんな朝の幕開けにちょうどいい曲はないな、などと悦に入っていた。東京のFMは洗練されてるなあと感じたものだ。

あの頃はビル・ウィザースの歌に洗練を求めていたんだろうな。ラジオの「Lovely day」はフェイドアウトして道路交通情報が流れた。そんなところまで洒落ていた。男同士の暑苦しい真夏の朝のドライブ、軽自動車の車内に心地よい風が吹き抜けた。

今夜、改めてこのベスト盤を聴いてみると、「Hello like before」が特に心に響いた。おっさんになると、こういう夢想の世界のような曲が心にしみるのだ。

若い頃はお互いに解りあえなかった二人が再会する。二人はおそらくティーンエイジャー(もっと前か?)の頃に恋仲だったこともあるだろう。本当だったら気恥ずかしくて会おうとは思わなかったけれども、ふとしたきっかけで出会う。

きっとどこかで再会すると思っていたんだ。今だったら、お互いのことわかりあえるかもしれないね。

などと、独り心の中でつぶやくおっさんの気持ち。なんだかわかるような気がする。この曲をリリースした時、ビル・ウィザースは30代後半だと思う。そういう年代の人にぜひ聴いてほしい曲だ。

あの頃はお互い子供だったんだ。

気まずいからって、この場をつくろうために「ああ、あなたのこと覚えてるわ」なんて野暮な会話をするのはよそうか。

ちょっとロマンチストすぎる歌詞の内容も脂がのっていていい。人間、40代にさしかかるとあつかましくなって、似合わないとわかっているロマンチックな世界にも酔えるんだ。さだまさしもいいけれど、あれはちょっとリアリティがありすぎる。

この曲で、ビル・ウィザースは含みをもたせながら、全てを語らない。全てを語らないから、こっちは色々想像してしまう。まあ、この後の展開は大体想像つくんだけれども。

その、想像ついちゃうところがまたおっさんになった証拠だな。どんな想像してしまうかは、是非聴いて確かめてみてください。

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