砂をつかんで立ち上がれ

世間はすっかり2021年になった。年を越したので当たり前であるが、何だかこういう風に急に変わられると実感がわかない。できることなら、少しづつ、緩やかに新年を迎えて欲しいものだが、世の中そういうわけにはいかないのだろう。

仕方がないので、私も2021年に合わせて、人並みに元旦を過ごした。コロナ禍のこともあるので、できるだけ人混みのあるようなところにはいかずに過ごした。一日中本を読んだりゴロゴロしたりして過ごした。

一年の計は元旦にありなどという言葉もあるから、元旦こそ充実した一日を過ごさなければならないのだろうけれど、なかなかそういう風に身体はできていないので、急に元旦だからといって体がキビキビ動くようなものではない。それでも、あまりゴロゴロしてばかりではダメだろうと思い、本を読んだり、家族と過ごしたりして一日を過ごした。

特にクリエイティブなことはできない一日ではあったが、それでも、為になる本を読めただけでも良しとしよう。(まだ、読み終わったわけではないけれど)

もう、10年も前に出版された楠木建の「ストーリーとしての競争戦略」を読んでいる。なかなか面白い本で、どんどん読み進めてしまう。面白いだけで何も身につかなそうなところは怖いけれど、それでも、何も読まないよりは仕事に役立つのではないかと思って読んでいる。「競争戦略」というとそれこそ色々な本が出ており、どれもなかなかこむづかしいことが書かれている印象を受けるのだが(読んだわけではないので、正直わからない)、この本は平易な言葉で書かれているので、誰にでもわかる。

競争戦略を立てる為には、強く、太く、長いストーリーを考えなくてはいけない、そしてそれをスラスラと語れなくてはいけないというような内容である。いや、その逆か。優れた競争戦略は強く、太く、長いストーリーがあり、もっともっとそのストーリーを聞きたいと思わせるものである。といったほうがいいか。

「強く」というのは、そのストーリーが帰結する成功に向かう必然性の強さであり、「太く」というのはそのストーリー展開を支える要素の広がりと、まとまりであり、「長い」というのは、そのストーリーの語るべき内容の深さとも言い換えることができる。と、今は、そこの部分までしか読んではいないのだが、この続きが楽しみである。

願わくば、この本を読み終えた時、単なる成功事例の俯瞰に終始せず、自分のやり方の幅を広げる手助けとしていきたいと思っている。この手の本を読む際に、「ああ、そういう成功譚があるのね」という風に感じて終わってしまう、ということがままある。もしくは、単に「目から鱗」で終わってしまうこととか。

それでは意味がない。それは、学問の一番役に立たない形ではないか。私は、この本に学問は求めていない。実戦への転用を求めているのだ。この本にという書き方は受け身でよくなかった。この本を読んで私がしなくてはならないことは、この本から何か小さなことでも掴み取り、実践に生かすことなのだ。中島らもの言うところの「砂をつかんで立ち上がれ」ということだ。(本当にそんなこと言ってたかしら)

読むだけで満足してはいけない。今は、まだそんな齢ではないはずだ。

今年こそ、砂をつかんで立ち上がるのだ。