Mosriteの中でもなかなか人気の出ないMark V

今回もギターの話になってしまい恐縮だが、Mosriteの Mark Vについて少々。

モズライト マークVと聞いて、「ああ、あれね」とすぐにピンとこられる方はかなりのギター通、もしくはモズライト通だと思います。そこまで言わなくても、モズライト マークVなんていうギターは、有名人が使っているわけでもなく、みんなが知っているべきようなモデルではないですから、わざわざ調べないと知らないモデルと言えるでしょう。

モズライトといえば、オフセットボディー、ジャーマンカーブのVenturesモデルが有名ですが、あのモデルの派生モデルも色々と作っているのです。ホローボディーのコンボなんていうモデルもありますが、ソリッドボディーのモデルもMark IIとかMark Vとかを作っています。

私はどうも、あまり日の目を浴びることのなさそうなギターというのが好きな性分らしく、どうもそういうギターばかり欲しくなってしまいます。そういう、不人気ギターは人気モデルよりも少しだけ割安というのもありますが、実際買うとなると、やはりそれなりの値段はしますから、かなりの覚悟がいります。しかし、不人気モデルは市場流通量が少ない。少ないから、見つけたら、もう2度と再会することができないかもしれないと思ってしまいます。まあ、大抵の場合、中古ギター屋に長年ぶら下がっているようなものが多いので、べつに急いで買わなくてもいいのでしょうが、なぜか「欲しい」と思ってしまいます。

「不当」に低い評価を受けているモデルが好き、と言うか、そういうモデルをなんとか悪の手から救ってあげたいと思いギターを買ってしまうことがしばしばあります。

このMosrite Mark Vも言ってしまえばそういう一台と言えるのかもしれません。モズライトが欲しいとおっしゃっている方に何度かお会いしたことはありますが、そういう人たちは普通のベンチャーズモデルが欲しいと言っているわけで、決してMark IIやらMark Vをほしいと言っているわけではない(いや、そうとも言い切れないか)。普通のベンチャーズモデルは、見た目もかっこいいし、何よりあのベンチャーズが使っているあのモデルだ。そこにきて、Mark II、Mark Vに関して言えば、ベンチャーズが持っているところはほとんど見たことがない(いや、アルバムの裏ジャケとかで持っているんだけれど)。だから、みんなあんまり欲しがらない。

しかしですね、 Mark V、これが実物を見てみると、なかなかいいギターなんです。まず、作りがチープ。これは、エレキのロールスロイスと呼ばれているモズライトですが、Mark Vやら Mark IIに関して言えば、これはエレキのトラバントか、というほどチープ。ネックバインディングもなければ、ネック材の取り方も、木材を最小限使って作ってます、と言う感じで好感が持てる。そして、モズライトの看板とも言えるヘッドが妙に小さい。

この、チープさが良い。エレキのロールスロイスは恐れ多くてなかなかライブなんかに持ち出すのに気が引けますが(じっさい練習にも持って行ったことはないな)、このMark Vであれば、もう、キャンプにでも持っていけそう。

チープな作りなのですが、プレイアビリティーはまさにモズライトそのもの。ネックグリップの細さ、フレットの低さなんかは、モズライトの上級機種と同じです。この辺はさすが、量産モデルのくせに丁寧に作っております。ペグもクルーソンを使っているし、ブリッジも、ローラーブリッジでこそないけれど、モズレーユニットが付いている。えらい、手抜きをしながらも、ちゃんとしたものを作っている。

それじゃあ、このギターに不満な点はないか、と聞かれると、それはないわけではないわけで。色々あります。

まず、ネックジョイント、17フレットジョイントなのは良いけれど、ボディーのデザイン上、17フレット以上はもう、「弾くな」と言われているのかと思うほど弾きづらい。クラシックギターでももっとハイポジションは弾きやすいだろうかと思われる。まあ、このギターでバリバリソロをとってやろうとか考えていないから、それは別に良いんだけれど、17フレット以上が弾きづらかったら、

ベンチャーズが弾けないだろ!!

仕方がないので、コードカッティング専門に使っています。

それと、このピックアップ。ハムバッカーなのかなんなのか分解したことないのでわからないんだけれど、音には不満ありませんが、ハムにしてはどうもノイズが大きい気がします。モズライトのピックアップってそもそもノイズは大きめなのでけれど、それを解決しようとしてわざわざハムバッカーにしたのだったら、もう少しノイズが小さくなってくれても良かったのではないか。

まあ、私はプロのミュージシャンじゃないから多少のノイズはどうでも良いのだけれど、今日のノイズが少ないピックアップに比べたら、なかなかのものです。

そういうわけで、全く不満がないかといえば、なくはないのだけれど、1965年という時代を考えれば、世の中のギターがロクでもない方向に傾きつつあった時代に(これは、私の個人的な見解ですが)モズライトはよく頑張っていたな。

何よりも、このギター見た目が良い!と、いつも結局見た目が良いで落ち着いてしまうのだけれど、ギターなんてある程度のクオリティーを保っていたら、あとは見た目が重要です。この、控えめなジャーマンカーブが美しい。高級感が出ない範囲ギリギリのラインのジャーマンカーブ。不恰好とも言えるデザインも良い。こういう不恰好なデザイン、現代人はなかなか作れません。セミーモズレー、よくこれでOKしたなというぐらい洗練されていないデザイン。これが、良い。

モズライトといえば、とりあえず、ベンチャーズなんだろうけれど、モズライトギターの元祖Joe Maphisがこれを弾きまくっていたらさぞかっこいいだろうな。いっちょ、このギターでカントリー旋風を吹かせてやりたいと思わせられる一台です。