オルガンの沼、numa organ

以前にも書いたかもしれないが、私はハモンドオルガンという楽器がどうも好きで、オルガンもののジャズのCDやらレコードを数多く持っている。近年は、ジャズを聴くと言ったらオルガンものばかり聴いている。

ハモンドオルガンという楽器は、もともとパイプオルガンを買えないまたは設置できない貧乏なアメリカの教会にパイプオルガンの代用品として置くために開発された楽器なのだが、そのこともあってか、ゴスペルなんかによく使われている。だから、ジャズで使われる場合も、ゴスペルのオルガンのサウンドを彷彿とさせ、どこかスピリチュアルで、ソウルフルな音楽が出来上がる。おそらく、オルガンもののジャズのそういうところが好きなんだろう。

ジャズのHammond organプレーヤーとして有名なのは、ジミー・スミスが間違えなくナンバーワンだろうが、それ以外にもジャズオルガンプレーヤーは数多くいる。そして、それぞれが独特の奏法や、スタイルを持っていて、個性豊かな世界である。私は、特にリチャード・グルーヴ・ホームズとジョーイ・デフランセスコが好きで、彼らのレコードを特によく聴いている。前者は、左手のベースラインがものすごくドライブしていて、グルーヴがあり(さすがグルーヴ・ホームズ)聴いているだけで、心が高まる。後者は、ものすごいテクニックを誇る当代きってのオルガンプレーヤーなのだけれど、テクニックがどうこうでなく、シンプルにキャッチーでいて、魅力的なサウンドが素晴らしい。それぞれに、出すアルバム出すアルバム全てが必聴の名盤!

それで、私も、いつかはオルガンが弾けるようになりたいと思い、昨年の今頃Nord Electro2というデジタルオルガンを買った。それで、しばらくは満足していたのだけれど、Nord Electro2のオルガンもなかなかよくできているのだけれど、どうも物足りなくなってきた。それは、Nord Electro2のオルガンの音がどうも作り物っぽく聞こえてきてしまったのだ。ろくに弾けないくせに、偉そうなことをいうのも憚られるけれど、このころのNordのキーボードの音源は、よくできてはいるのだけれど、どうも本物っぽくない。いじることのできるパラメーターも無限で、音だけ聞いていると、ほとんど本物のハモンドと区別はつかないのだけれど、レズリースピーカーのシミュレーションをかけると、どうも嘘くさくなる。キークリックのノイズが、どうも作り物っぽい。いや、普通に弾く分には誰も文句言わないだろうレベルなんだけれど、どうも「Hammond organ!!」という気分が出ないのだ。

それで、しばらくNord Electro2は弾かないままになっていた。

そして、ついに、買ってから1年も経たないぐらいなのだけれど、買い換えてしまったのだ。オルガンを。

新調したのは、nordと同じくデジタルのクローンウィールオルガンなのだけれど、Studiologicというイタリアのキーボードメーカーが出しているNuma Organというモデルだ。いやもう、こういう買い物ばかりしているから、私はいつも金がない。

このnuma organ、Joey DeFrancescoのシグネチャーもでるなのだ。このモデルにしたのは、なによりも、Joeyのファンであるという理由が一番なのだが、さすがオルガン専用機、オルガンの音が「それっぽい」。Joeyが本当にこのモデルを弾いていたことがあるのかどうかは怪しいのだが(おそらく、弾いていないと思う)、彼の演奏する Hammond  B3の音のあの感じがよく出るのである。本物のハモンドよりも、すこしおとなしいサウンドではあるんだけれど(それはおそらく、アンプが真空管でないからだろう)、いじっていて、Hammond organの気分が出てくるのだ。

キーボードは73鍵なのだけれど、Hammond B3同様、一番下の1オクターブ分の鍵盤はプリセットボタンとして割り当てられている。だから、実際に演奏できるのは61鍵。この61鍵というところが、ハモンドと同じで良い。一段鍵盤は、本気でオルガンを弾いている人はどうなのかわからないけれど、うちは、Rhodes MK1の上に積んで使っているから、丁度良い。2段鍵盤が必要になるようなシチュエーションでは使わない(そもそも、そんなに弾けないし)。

クローンウィールは、日進月歩なのだろうけれど、私にはこのnuma organが丁度良いサイズだし、音色も好みだし、直感的に操作できるコントロール、そしてなにより、このルックスが気に入っている。Hammond organはアメリカの楽器だけれど、オルガンといえばイタリア製(ファルフィッサ!、バイカウント!)。numa organもイタリアのメーカーの製品なのだが、随所にイタリア製ならではのチッチさがあり、北欧製の高級機Nordとは一線を画す。

Nordの今の商品は間違えなくデジタルクローンウィールの中では最もできの良いモデルだとは思うけれど、なんとなく可愛げがない。このnuma organはデジタル楽器でありながら、どこかこう楽器としての可愛らしさがある。本当にこれデジタルなのか?トランジスタで音源作っているんじゃないか、というような音から、オリジナルB3の行き過ぎたイミテーションまで、なんでもこなせてしまう、B3クローン。

でも、これ、今の時代はたしてどのぐらいニーズがあるんだろう?ハモンドオルガン専用機のデジタル楽器って、俺以外誰が欲しがるんだろう?などと、不安になるぐらい、ハードコア〜な楽器です。