Nationalって言ったって、電気屋じゃないよ。ギターだよ。バタヤンのギターだよ。

このところ楽器の、とくにギターの話ばかりで恐縮だが、今日もギターについての話。

Nationalというギターブランドをご存知でしょうか。ギターメーカーとしてのNationalはかなりの老舗で、1920年代からあるようです。ドブロ社の創業者として有名なジョン・ドピエラという方が創業したナショナル社はリゾネーターギターをジョージ・ビーチャムと開発し、一躍有名になったようです。

なので、Nationalのギターといえば、ご存知の方はまずリゾネーターギターを思い浮かべるかと思いますが、私の手元にあるナショナルのギターはリゾネーターではなくて、エレキギターです。ナショナルブランドののエレキギターとして有名なのは、ファイバーグラス製のニューポートという60年代に発売されたギターが有名で、ビザールなギターの代名詞とも言える品物です。このニューポートというエレキは、デザイン以外特に特筆すべきこともないギターなのですが、ホワイトストライプスのギタリスト、ジャックホワイトが弾いていたことで一躍知られるようになりました。

ニューポートは、当時は安物のギターだったのでしょうが、今となってはヴィンテージ市場でかなりの価格になっているかと思います。そういった、高価なギターはなかなか手が出せないので、私は所有しておりませんが、なかなか気になるギターではあります。

私の持っているナショナル製のエレキは、Val Trolという名前で、おそらく1958年製のものです。バタヤン(田端義夫)が同じく1950年代のナショナルのギターを愛用しておりましたが、ネックジョイントの仕様などにているところがあります。

なんと、ネックジョイントがネジ一本でついている。よくもまあこれで強度が出せているなと感心するもんです。フェンダーなんかの4点止めのボルトオンネックに慣れている私たちには、このボルト一本止めというのは、なんとも不安なものですが、バラしてみると納得します。

このギター、ネックにトラスロッドは入っておらず、その代わり、ちょうどのこヤスリのような、かなりごっつい金属の補強構造がネックに仕込まれています。この補強構造がそのままネックジョイントまで伸びていて、ボディーにがっちりはまるようになっています。そのがっちりはまった金属板をボルト一本で締め上げてネックを固定しているのです。そのため、糊を使わずに、ボルトオンでネックが固定されています。

とは言っても、やはり、ネジ一本で止まっているだけあって、ネックのジョイント角なんかは、なかなか不安定なところがあります。一度、ヘッドのところにストラップを通して使っておりましたが、なんともチューニングが安定しないと思っていたら、ストラップがネックを引っ張ることで、ジョイント角がずれていました。

そういうこともあって、弦のテンションはかなり緩めにセッティングされております。スケールが56センチの超ショートスケールということもあり、かなり太いゲージを張っていても弦のテンションは緩めです。

肝心の音の方はどうかと申しますと、これがまた曲者。

まず、このギター ピックアップはネック側についたハム一発のように見えますが、実のところ、ネック側のピックアップはシングルピックアップで、ブリッジ下にピエゾピックアップが仕込まれております。これが、オリジナルの仕様です。

ネック側のピックアップは、そのまま単品じゃ使えないほど、モコモコ。ブリッジのピエゾピックアップは、ピエゾというせいもあって、出力が極端に小さく、サウンドは驚くほどジャリジャリ。こちらもそのままでは使えません。

仕方なく、セレクターをセンターの位置に合わせ、ネックピックアップ、ピエゾピックアップをミックスで使います。そうすると、なんとなく使えるような、使えないようなサウンドになります。一体、このギターの発売当初はどういうシュチュエーションでこいつを使っていたのでしょう。

そういう、結構な問題児ですが、なんともデザインがいい。木製ボディーにはジャーマンカーブが入っており、なんとも美しい。ショートスケールのネックに、馬鹿でかいヘッドがなんともお洒落。

ヘッドのナショナルのロゴがまた、目立って素敵です。

ペグは、おそらくこのギターのために特注で作られたであろう、クルーソン製。結構良く出来ています。

ものすごい、B級ギターで、外で使う機会はまずなかろうかと思いますが、寝る前に寝室で爪弾いていると、なんとも侘しい気分に浸れます。この儚い生音が、私をセンチメンタルな気分にさせます。何度も手放そうかと思いましたが、どうしても惜しくて手放せなかったギター。National Val Trol。

また、寝床で、じっくり爪弾いてやろうかと思って、部屋の隅のギタースタンドにいつも立ててあります。