Joe Newmanの唄

Joe Newmanが好きである。カウントベイシー楽団で吹いていたトランペッターの中でもかなり好きな方である。いちいち上手い上に、分かりやすい。小難しいことはあまりやらずに、ソロもコンパクトに収めてくる。こういうトランペッターが良い。

半年ばかりペダルスチールギターもののジャズを聴いてきたが、ペダルスチールの複雑なハーモニーにちょっと疲れてしまい、今はしばらくトランペットもののジャズを聴いている。トランペットは単旋律なので良い。難しいことをやっていても唄がある。

ペダルスチールのジャズもなかなかあれはあれで良い。普通の楽器ではなかなか再現できないサウンドとコードワーク(コードの構成要素から省略する音符が独特である)によって、あの楽器でしか創り出せない音楽がある。ペダルスチールのスタンダードなジャズも良いけれど、ノンペダルのスティールギターで演奏されるウエスタンスウィングも良い。長時間聴くに耐えうる音楽である。

しかし、四六時中ペダルスチールのことを考えていたら、ますますあの楽器がわからなくなってしまった。もっと、基礎的な練習をしなければならないのだけれど、初めっから基礎的なやつばかり聴いていては面白く無い。それで、思いっきり複雑なハーモニーのやつを聴いていたら、自分の楽器の練習とかけ離れてしまい、なんだか頭がこんがらがってきてしまった。

そこで、トランペットの小唄ものに切り替えた。

おりしも、自宅では妻と娘がトランペットを嗜んでいる。先般、先生に習い始めたのだ。私は人にものを習うのが苦手なので習ってはいないが、私も時々練習をはじめた。トランペットの練習は時間を選ぶのでペダルスティールギターよりも制約が多いのだが、ペダルスティールは10分も練習すると頭が疲れてしまうのだが、トランペットの練習は体がバテるまでは続けられる。(ご近所や家族には迷惑な話なのだけれど)

それで、トランペット機運が盛り上がってきていて、トランペットもののジャズを聴くことにしたのだ。なんせ、トランペットものといえば、チェットベイカーが好きなのであるけれど、あればかり聴いていては心が暗くなってしまう。理想のトランペットの音色はチェットのような柔らかな音色なのだが、せっかく聴くならああいうのと併せて、明るく元気なやつも聴きたい。

そんなこともあり、今日会社帰りにディスクユニオンに寄って、Joe NewmanのCDを購入してきた。Joe Newmanがどれほどリーダーアルバムを出しているのかは正直言って知らないのだけれど、彼のトランペットは明るく明瞭なので、アルバムもそういう気分で聞くのであれば、だいたいどれもハズレは少ないと思う。

今日聴いているのはSoft Swingin’ Jazzというアルバムなのだけれど、これも小気味良いジャズを初めっからどんどん繰り出してくる。私の大好きなハモンドオルガンのシャーリースコットとの共演版である。Joe Newmanはミュートでもオープンでも機嫌よくトランペットを吹いている。

ジャズは、こういう難しく無いアルバムが少ないと思う。とくに名盤の誉れ高いアルバムはどれも先駆的であったりして、どうもこう、純粋に楽しんでしまおうという気分になれないものの多い。スリリングさを求めるならばハービーハンコックの処女航海とかああいうようなアルバムの方が良いのかもしれないけれど、私が今聴きたいのはそういう難しいジャズではなくて、とにかくノリの良い、楽しく唄うジャズなのだ。

そして、このアルバムJoe Newmanが歌いまくっている。いや、文字通り唄っているのだから、ぜひ聴いてみてはいかがだろうか。