既視の街を手にいれた。

先日、中野のまんだらけで金井美恵子、渡辺兼人の「既視の街」を買った。渡辺兼人はこの本の写真で木村伊兵衛賞を受賞しているから、彼の代表作とも言える。

写真集としては、印刷がそこまで綺麗でもなく、小説の挿絵にしては主張してくる写真群がこの本を特殊なものとしている。小説は、妙に暗く、それでいて重すぎない。むしろ、何気ない日常を撮っている写真のほうが重い感じすらする。

もし、これらの写真が、もう少し軽い印象を受ける作品群であったら、この本はここまで異彩を放っていないだろう。その一方で、また、この小説がもっとドラマチックなものであったら、これらの写真も生きてこないだろう。その絶妙なバランスで、この本は成り立っている。

写真と、小説に関連性がなく、かつ、両方の持つ世界観がこれほどまで当たり前に共生できているのも不思議だ。この本は、写真集でもなければ、小説でもない。まさに、写真と小説が合わさり一冊の本となって完成している。

なんだか、この本について、私が今書けるべきことが整理できていないので、続きはまたこんど。