なんの心配もなしに聴けるピアノトリオの名盤「Misty Red」

Red Garlandについては、ここで何度か書いたことがあるけれど、ジャズのピアノトリオで一番たくさんCDを持っているのはレッドガーランドかもしれない。

そもそも私はあまりピアノトリオを聴かない。ジャズは好きなので、CDもたくさん持って入るのだけれど、ピアノトリオのCDはビルエヴァンスとエロルガーナーと、レッドガーランドぐらいで、あとはあまり持っていない。

なぜ、ピアノトリオを聴かないのかは自分でもわからないのだけれど、長らくピアノの音が苦手だったせいもあるかもしれない。私は、以前ピアノ屋で勤めていたのだが、勤める前まではピアノ音楽は殆ど聴かなかった。ピアノの音がどうも好きになれなかったのだ。

仕事の関係で幾つか聴いているうちに、なんとか我慢は出来るようになった。クラシックも、ジャズも、少し聴くようになった。ピアノ屋がピアノ曲の一つも興味がないというのは、やはりちょっとまずいかなと思って最初は聴いていたのだけれど、聴いてみると、これはこれで全くダメというわけでもない。

まあ、ピアノを弾かない一般の方がわざわざCDを買って聴くような音楽は少ないが、その中でもなかなかいい音楽がある。

Red Garlandはそのうちの一つで、ジャズが苦手な方でも、ピアノが苦手な方でも、彼のピアノトリオの作品の中に一枚ぐらいは気に入るレコードがあると思う。レパートリーは広いし、極端に前衛的なこともしない。いつも安定していい演奏を聴かせてくれる。

今日聴いている彼の演奏もなかなかいい。

昨日、西新井のブックオフで購入した「Misty Red」という日本企画盤のピアノトリオ作品だ。結構晩年の作品に当たるのではないかと思うけれど、若い時から変わらず、落ち着いてスイングする彼のピアノを聴くことができる。タイトル曲のMistyもいいけれど、ここでは全てスタンダード曲が演奏されているので、どのトラックから聴き始めても悪くない。

このCD、存在は知っていたのだけれど、日本企画盤ということもあり、購入するのをちょっとだけ躊躇していた。日本企画盤には、独特の胡散臭さがあるからだ。よく言えば完成度が高く聴きやすいようになっていて、悪く言えば、どうも優等生すぎておもしろくない演奏のレコーディングが多いのだ。

しかし、よく考えてみれば、これはレッドガーランドのCDだ。危なげない演奏に決まっている。彼は、そういう名手なのだから。

また秋が来た

盆が過ぎると秋というのはわかっていながらも、東京の8月は暑苦しく、秋が来ても体感的には気づかない。暑い暑いと汗をかきながら、8月を過ごすのが毎年の常というものである。

9月が半分以上過ぎて、ふと、涼しさを感じるようになった。洋服屋から夏物の半袖が消え、あまつさえカシミアのコートすら並び始めた。たしかに夏は過ぎていったのだ。

今年の夏のおとづれはどんなだったのかは覚えていない。ただ、やけに暑い夏であったことだけは覚えている。新型コロナウイルスのニュースもだんだん気にならなくなってきた頃、夏がおとずれた。ものすごい湿度の梅雨が続き、部屋中のものにカビが生えてしまい、カビキラーで拭き掃除をしていたと思ったら、知らぬうちに暑苦しい夏が来ていたような気がする。とにかく、今年の梅雨は本当にジメジメした嫌な梅雨だった。

梅雨が明けたのがいつだったかはよく覚えたはいないけれど、そのあとは何日も暑い日が続いた。とにかく暑い夏だった。

今日は4連休最後の日。散歩に出かけた。御茶ノ水まで電車で向かい、楽器屋を数件見て、レコード屋を見るというだけの散歩。4連休とは言っても、どこに行くわけでもなく家で過ごしたけれど、毎日家の近所に散歩には出かけた。昨日は西新井まで電車で行き、昼ごはんを食べて帰ってきた。

それでも、コロナの影響はまだ続いているのは事実だろう。私は、旅行にはあまりいかない方なんだけれど、4連休もあれば、妻の実家に帰省するなりなんなりが出来たはずだが、今回はどこにも行かなかった。

その代わりに、毎日少しづつ小さな外出はして過ごした。

今日、御茶ノ水から、上野まで歩いた道すがら、ふと、もう暑くなくなったということに気づいた。とくに、秋の花を見たわけでもなんでもなかったが、ふと秋の訪れを感じたのだ。

帰宅したら、一人だった。

私は、とりあえずステレオのスイッチを入れて、音楽を聴いた。Valery Afanassievの弾くFranz Schubertのソナタ。シューベルトのこの曲はこの季節にふさわしいような気がした。

秋の深まった森の中をどこまでも歩くような爽やかでいて、すこし肌寒さを感じる音楽。ピアノ一台で演奏されているのにもかかわらず、どこかティンパニーや、コントラバスの音が聞こえて来るような不思議なところがある。Afanassuevがどのようなピアニストか、私は詳しくは知らない。ただ、この演奏は格式が高いシューベルトというよりも、どこかアンビエントな雰囲気のある内省的な演奏だと感じる。特に1楽章は。

20分にも及ぶ1楽章だけを聴いたら、妻と娘が帰ってきたので、夕飯にした。夕飯が終わると、疲れてしまって、自室で少しだけ眠った。汗をかいたせいでよく眠れなかったのだが、疲れは少しとれた。

書斎に戻り、再びAfanassievのCDを聴きながら、パソコンに向かっている。私は、一生かかってもこのような大曲をピアノで演奏することは不可能だろうけれど、Schubertの曲は好きなので、何か一曲弾けるようになりたい。あの、映画「さよなら子供達」で主人公が弾く「楽興の時」の第2曲?だったか。あれを弾けるようになりたい。