Tower of Power, Tower of Power! “Diggin’ on James Brown”

高校時代に、友人がラジオの FM局のプレゼントでTower of Powerのライブのチケットを当てた。あいにく彼はそのコンサートに行けないというので、私がそのチケットをもらった。それが私のTower of Power(以下TOP)との出会いだった。

そのライブを聴いてすぐに私はTOPのファンになった。これほど魅力的なサウンドはそれまで聴いたことがなかった。ロッコのベースがポンポン弾みながらビートを刻み、ドラムのスネアの音は軽く、それに引き締まったホーン隊が煌びやかに飛び出してくる。ボーカルはブレントカーターの頃だったと思うけれど、エミリオたちがサックスを吹きながら入れるコーラスも素晴らしかった。

文句なく、素晴らしいバンドだった。当時は、それがなんというジャンルの音楽なのかすらも知らなかった。ただひたすらノリが良く、聴いているだけで自然に体がウキウキして動く。これほど気持ちの良いライブは初めてだった。

それが、世界最高のソウルバンドだとは知らなかった。知らないで、いきなり本物を聴いた。

ステージが始まる前に、ステージの前に並べられたアルト、テナー、バリトンサックス、トランペット、それらを見ただけで、なんてかっこいいんだってビビった。ビビってチビりそうになった。ステージの床にはセットリストがマスキングテープで貼り付けてあった。

ステージの袖から黒いスラックスに、ベストを着たエミリオが入ってきて、軽くサックスの音を確認したと思ったら、いきなりホーン隊が一斉に入ってきた。そのホーン隊のキリッと揃っていたことがずっと印象に残った。寸分のくるいもないタイミングで、トランペットとサックスが音をヒットする。その間を縫うようにドクのバリサクがブリッと鳴る。なんてクールなバンドなんだ。これはなんなんだ、って思った。

よく覚えているのはDiggin’ on James Brownだ。 “I still be diggin’ on James Brown”のフレーズには震え上がった。ああ、この人たちもやっぱりジェームスブラウンがアイドルなんだ。やっぱりジェームスブラウンってすごいんだ。って思った。

それと、Sexy Soulがかっこよかった。それにIt’s So Niceでエミリオを中心にホーン隊の全員がコーラスを入れるのがかっこよかった。ちゃんと振り付けもあって、これがキマっていた。

キャパ100人ぐらいのホールでオールスタンディング、フリードリンクだった。ああ、大人になったら、またTOPのライブを聴きたい。と思って、今までまだ聴いていない。ロッコが病気になってしまったりしてるから、もう聴けないかもしれない。それでも聴きたい。

そんなことで、今夜は TOPの”Soul Vaccination Live”というライブ盤のアルバムを聴いている。スタジオアルバム”Souled Out”がリリースされて間もなくの頃のライブ録音盤だ。ちょうど、私が高校時代に聴いたライブがこの頃だった。だから、このアルバムに入っている曲のほとんどを私はそのLiveで聴いた。だから、このアルバムを聴くたびにその時のTOPの姿が目に浮かんでくる。世界最高のバンド。

TOPこそ世界で最もシャープなホーンセクションを揃え、力強いグルーブを生み出すリズムセクションを持ったバンドだと思う。

普段は、カントリーばかり聴いている私も、Tower of Powerには目がない。

先日、上海のJz Clubでライブを聴いていたらDiggin’ on James Brownをバンドが演奏した。イントロから、まさにTOPサウンドで、ここ数年、音楽であれほど興奮したのは数回しかない。本物のTOPを聴きたくなった。

Jz Clubでのライブはまだまだ続くようだったが、私はDiggin’ on James Brownを聴き終わるとともに、ビールを飲み干し店を出た。

私はそこまで聴けばお腹いっぱいだった。20年以上前に聴いたTOPのライブの余韻に浸りたかった。それ以上は何もいらなかった。

もう上海には何も心残りがない気がした。

エド山口、モト冬樹兄弟はテレビで最も上手いギター兄弟である

兄弟でともにミュージシャンというのはよくいるけれども、その中でも兄弟でギタリストという組み合わせは結構多いと思う、私の好きなトミーエマニュエルも兄貴のフィルエマニュエルももの凄いギタリストだ。

私の主観からいくと、この世で最も好きなギタリスト兄弟はStevie Ray VaughanとJimmie Vaughanだ。SRVもジミーも独自のスタイルでブルースを奏でる。お互いに影響しあった、特にSRVは兄貴に随分影響を受けたと語っているけれども、二人ともお互いのスタイル・サウンドとは異なる。どちらも甲乙がつけがたいギタリストであるとともに、世界最高のギターヒーローの一人だと思う。

けれども、もう一組、忘れてはいけない兄弟がいる。バブル世代の方々はテレビでおなじみのモト冬樹とエド山口兄弟である。テレビの中の世界で世界一ギターが上手い兄弟といえば、エド山口とモト冬樹だろう。お茶の間で一番聞かれている兄弟である。

エド山口はヴィンテージのモズライトでベンチャーズをベースにしたギターインストの世界では独自の世界観を持っているし、オリジナルアルバムも出している。モト冬樹、はグッチ裕三とのコンビの中でギターを弾いているけれども、これもネッドスタインバーガー時代のスタインバーガーを自由自在にあやつり、どんなポピュラー音楽の伴奏も付けれる実力がある。恐るべし兄弟だ。

以前、YouTubeで兄弟対決を行っていたが、こだわりではエド山口に軍パイが上がり、総合点ではモト冬樹の方がうまかったかもしれない。けれど、私はエド山口の方が好きだ。

ここに、一枚のエド山口と東京ベンチャーズのCDがある。内容は一見するとベンチャーズやスプートニックスのような内容なのだけれど、エド山口のオリジナル曲も光る。そして彼のギタープレーが他の追随を許さないのだ。まさに彼のサウンドに完成されている。

特に、アルバム最後の曲「前科2犯のブルース」が素晴らしい。この曲を聞く為だけでもこのアルバムを買う価値はある。

東京ベンチャーズがなぜ「東京」ベンチャーズを名乗るかはこの曲にかかっている。ピッキングのタイム感覚が、いかにも一時期のギターインストバンドを思わせて素晴らしい。

聴いたことない方は、とりあえず「前科2犯のブルース」を聴いてみてほしい。