フェニックスに着く頃には。Ovation 1627 Glen Campbell

今まで、あまりオベーションのギターというのに興味がなかった。あの、樹脂製のボディーがまず怪しい。いかにもいい音がならなそうな気がしていた。

にもかかわらず、一台買ってしまった。Ovation 1627 Glen Campbellを。

カントリーのバンドをやっているのだが、そのバンドリーダーでPSGの方がOvationを一台もっている。5ピースネックのやつをだ。

私も、興味がなかったとは書いたけれど、Ovationを一台買うなら5ピースネックのやつが欲しいと思っていた。ワンピースよりも強度がありそうで、ネックがいかにも安定してそうだからである。Ovationはネックのジョイントがどうなっているのかよくわからないので、きっとネックリセットをするとなると大事だろう。だから、ネックは安定性がいいやつが欲しいと思っていた。

ちゃんとしたカーマン製で、ボディーはリラコードのやつがいいと思っていた。わけのわからないプラスチックでできているやつや、日本製のやつは嫌だと思っていた。

たいして興味がなかったのに、「もし買うなら」と考えているあたりが、よくわからないのだが、「もし買うなら」80年代にカーマン(アメリカ)で作ったリラコードボディーの、5ピースネックの、レジェンドが欲しいと思っていた。

Adamasが欲しいとは一度も思ったことがない。Adamasがいいギターなのは頭では理解しているつもりだが、そこまで欲しいとは思わなかった。アダマスぐらい高級ギターになると、気軽に持ち歩けない。気軽に持ち歩けないようなギターは何本も要らない。ましては量産ギターであるOvationに高級路線は求めていない。

むしろ、ちゃんとしたアメリカ製で、耐久性の強いリラコードボディーなら、音もそこそこ良いだろうし、ラフに使っても平気そうなので、「欲しい」と思っていた。

思えば、私がギターを欲しいとはじめて思った中学1年生の冬、札幌のギター屋「玉光堂」へ行って初めてもらってきたギターのカタログはOvationのカタログだった。グレコとか、イバニーズとかじゃなくて、オベーション。

生まれて初めて買ったギター弦はカーマンの弦だった。

カーマンが何故ギターの弦を出していたのかはわからないけれど、当時はカーマンブランドの弦というものが存在したんだろう。09のセットだった。

私は、そのカタログと弦を毎晩のように見て、いつの日か買うギターに夢を馳せていた。ギターといえば、エレキではなく、アコースティックギターが良いだろうと思っていた。オベーションのカタログばかり見ていたからだろう。

何故、今回1627 Glen Campbellを買ったか、それは、私がGlen Campbellのファンだからである。彼の歌声は正直甘ったるくてあまり好きではない。しかし、彼の歌のセレクションは常に素晴らしく、ギターがものすごく上手い。ギターが上手いのはあたりまえだ、彼はビーチボーイズのバックでレコーディングミュージシャンをやっていたのだから。

グレンキャンベルこそ、ギター小僧の憧れの人だと思う。何より、ギターを持つ姿がかっこいい。ギターが似合っている。センスが良いとは言い難いファッションに、どんなギターでもうまいこと合わせるのだけれど、このオベーションを持つ彼は特に良い。

グレンキャンベルモデルは特に高級じゃないところも好感が持てる。装飾が少なく、コントロールもシンプル。音もひねったところがない、オベーションらしい音がする。

オリジナルの茶色の馬鹿でかいケースもかっこいい。オベーションを持っている、という満足感に浸れる。ケースの方がギター本体よりも高いんじゃないかと思わせられるケースだ。

カーマン、よくやった。