古の栄光たちHamer USAとPeavey Vintage

私は、ギターも最近はほとんど弾くことがなく、ただ眺めているだけである。

先ほど、きまぐれにギターを弾こうと持ってみたが、左手の力が弱くなってしまったのか、コードをおさえるのがやっとで、チョーキングができなくなっていた。ピッチがきちんと上がらないのだ。

そういえば、最近は楽器に触るというとペダルスチールばかりで、ギターはほとんど触っていなかった。仕方ないことである。

書斎に今はHamer USAの古の名器 Sunburstがあるのだが、このギターはミディアムスケール(ギブソンスケール)なので比較的弾きやすい方のはずなのだがこの体たらくである。そのうちコードすら押さえられなくなるだろう。これではいかんな。

アンプは、70年代の Peavey Vintageというアンプを置いている。これも、古の名器で100ワットのチューブアンプである。プリアンプはソリッドステートで、歪ませると邪悪な音がする。さすがは Peaveyである。フェンダーのアンプとはわけが違う。

私が中学生の時、父にギターアンプを買ってもらった。Peaveyのクラシックというアンプである。確か15Wだったと思う。それを購入してもらった際に、フェンダーの5Wアンプと大いに迷った。しかし、フェンダーの方は値段が1.5倍ぐらいしたのではないかと思う。なので、実質迷うも何も始めからPeavey一択だったのだろうが、それでも幼心に(幼くもないのだが)大いに迷ったきがする。

お店の人にPeaveyと Fenderで迷っているんです。と伝えると、Peaveyの方の歪みはFenderのような歪みではないですよ。と言われたのを覚えている。私は歪ませる予定はなかったので、そんなことどうでもいいと思い、結果として安くて大きな音がする Peaveyを父親に買ってもらった。

正解だった。

大人になって(それもかなりおっさんになってから)フェンダーのアンプも数台購入したが、フェンダーのアンプは育ちが良い音がするので、上手い人にはいいのかもしれないが私のような人間には、Peaveyの邪悪な音の方が合っているのかもしれない。

何と言っても、このHamerのようななんとなくやんちゃなエレキギターをつないで弾くには、Peaveyの歪みの方が合っているような気がする。いや、実のところフェンダーにつないでもいい音はするのだが、Peaveyの方が時代考証的に正しいような気がする。

この78年製のHamerはヘビーメタルの出始めの時代に作られたのだ。まだ世の中に今のようなバリバリに歪むハイゲインアンプはなかったけれど、フェンダーのような奥ゆかしいサウンドも時代遅れになっていた頃のものである。同世代の楽器同士で鳴らすと、それっぽい音になる。

それっぽい音になったからといって、それで何を弾くというわけでもないのだが。

ヘビメタ野郎達の永遠の憧れ HAMER USA!

エレキギターはやはりFenderとGibsonだと思う。この二つのブランドの今のギターがどうであれ、FenderとGibsonのギターはエレキギターのスタンダードを作った。ギターのスケール(弦長)のスタンダードもこの2社のモデルが基準になっている。ギターの形状や製法だって、ほぼこの2社のモデルがスタンダードになっている。そんなことは、私が今更なんと言おうと変わることはなく、1950年代から今に至るまでの約70年間エレキギター界をリードし続けてきたのは間違えなくFenderとGibsonである。

それでは、ギターラックにGibsonとFenderのギターさえあればよろしいか、と聞かれれば、それはそんなことはない。もっとも、この2社のモデルさえあれば、エレキギターの演奏には普通になんの支障もないのだが、フェンダー・ギブソンだけのギターラックはなんとも寂しい。ご飯とお味噌汁だけの食卓のようだ。世の中にはもっとおいしいおかずがたくさん存在する。

私は20代後半からギターが欲しくなる病気のようなものにかかってしまって、それまではフェンダー・ギブソンのギターすら持っていなかったのに、訳15年の間に欲しいエレキギターのほとんどを手に入れてしまった。26歳の時にギブソンのフルアコES-165を一台購入したのがきっかけだった。

Gibson ES-165はそれまでに出会ったこともないような完璧なギターだった。その頑丈な作り、弦高の低さ、弾きやすさ、太くてたくましい音、美しいラッカー塗装と仕上げ。世の中にはこんなに素晴らしいギターが存在するものなのかとため息が出るほど素晴らしいギターとの出会いであった。フルアコ(ジャズギター)を買うのは多分2・3台目だったかと思うけれど、それ以来ギブソンのフルアコ以上に素晴らしいフルアコに出会ったことはない。

そのあと、70年代のFender Telecasterを手に入れた。これはたしか、20代の終盤だったと思う。フェンダー不遇の70年代の作品であるが、これも素晴らしいギターだ。本物のテレキャスターというものに初めて出会った。その後60年代のテレキャスや50年代のテレキャスも弾いたりしたことはあるけれど、初めて購入した恐ろしく重たい70年代のテレキャスの音が私の中でのフェンダーの音の基準になっている。

ストラト・レスポールを初めて購入したのはもっと遅くてひょっとすると30代に差し掛かってからかと思う。レスポールについては、近年まであまり興味がなかった。重たいボディーもそこまで好きではないし、音もなんだか中途半端な感じがして、食指が動かなかった。しかし、1974年製のLes Paul Customを買って、その認識が一変した。Les Paulのゴワンという図太い音、弾きやすさ、取り回しの良いコントロール、何よりも存在感のあるルックスに惹きつけられてしまった。

Stratocaster, Telecaster, Les Paul, SGを手に入れて、ひとまず憧れのギターは全て揃った。50・60年代のGretschも何台か手に入れた。Rickenbacker、Mosriteも持っている。これ以上に欲しいものはないだろうと考えながらも、週に1回以上御茶ノ水の楽器屋街を訪れて楽器を物色している。

40代が見えてきた今、突然ヘビメタ時代の名器が欲しくなった。HamerとKramerである。

私が中学生の時、ギター雑誌を買うとかならずヘビメタギタリストが表紙を飾っていた。イングウェイマルムスティーン、ヴァンヘイレンはもちろん、スティーブヴァイやらスティーブ・スティーブンスやらゲイリームーアその他大勢のハードロック/ヘビーメタルのギタリストである。私は、彼らには全く興味がなかった。そもそも、ヘビメタをはじめとする、ギターを歪ませて早弾きをするというギタリストは好きではなかったし、そういうギターの入っている音楽には全く興味がなかった。私が好きだったのはブルース・ジャズ・カントリーのギタリストであった。その多くは、ギターをあまり歪ませることなく、早弾きをする場合もフルピッキングで行い、サスティンの短めのギターを好むし、そういう音作りをする。しかし、そういうギタリスト達が雑誌のカバーを飾ることはまずなかった。時代はヘビメタだったのである。

そういうこともあり、私はヘビメタのギタリストは敬遠していたし、むしろダサさすら感じていた。ああいうギタリストにだけは死んでもなるまいと考えていた。もっとも、ああいう風に弾きたくても、絶対に弾けないのだが(私は早弾きというのができない)。

それが、今になってあの時代にギター雑誌の表紙を飾っていたようなギターが欲しくなったのだ。ヘビメタの方々が弾いていたようなギターが。とはいえ、フロイドローズのようなトレモロユニットは絶対に使わないし、寝室で寝ながら弾けないギターは要らないので、極端な変形ものも要らない。そうなるとHamer一択となる(いや、Dean USAとB.C Richがあるか)。

Hamerはもともとヴィンテージギター屋が作ったギターメーカーである。少量生産で高級ギターだったため市場に出回っている本数が少ない。後年、アジア製の安物のモデルも出たがHAMER USAは音・作りの良さともに別格だ。ヴィンテージの良いところは真似して作っているが、ヘビメタ時代のニーズに則っているのでものすごく弾きやすい。そして、使われている木材がなんだかものすごく良い。さすがはHAMER USAである。

目下、私のギターラックの中でもっとも弾きやすいギターである。ボディーも小ぶりで取り回しに優れている。ピックアップはダンカンなのだが、案外ダンカンって良いピックアップ作るんだなと思わせられるくらい音が良い。きっと、このピックアップに合わせてギターの鳴りを設計しているんだろうと思うくらい音が素直で、かつアメリカンな乱暴さ、図太さがあって良い (リアピックアップは交換だけど)。

今まで買ったギターの中で、最も感銘を受けたギターの一つである。きっとしばらくはこのギターをメインに使うだろうと考えている。これからはこのヘイマーUSAでカントリーを弾こうと思っている。去年まではレスポールをメインに使っていたから、きっと音的にもあんまり違和感なく使えるだろう。HAMER USA Studio大切に使おうと思っている。