のどかで豊かなジャズのライブ Bobby Hackett 「Live at Roosevelt Grill Vol.2」

私はどうもBobby Hackettというコルネット奏者が好きである。昔(1940年代)グレンミラーのバンドでギターを弾いたりコルネットを吹いていた人だ。弾いていたらしいのだが、その頃の演奏はあんまり聴いたことがない。エディー・コンドンの名盤「Bixieland」でコルネットを吹いている。

ボビー・ハケットのキャリアについて、詳しいことはわからないので、詳しくは Wikipediaを見ていただければわかりやすいかと思う。実にシンプルにまとめられている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ボビー・ハケット

この人のコルネットの音は絶品である。どちらかというとソフトな音色でまさに私の好みである。Columbiaからリリースされていた、「The Most Beautiful Horn In The World」なんかは、ストリングスもので、ムード音楽に分類されかねないサウンドであるけれど、そういうジャンルにとどまらず、ジャズのアルバムとして楽しめる。彼のコルネットの音色がとても「ジャズ」だからである。まあ、なんとも雄弁なラッパである。

ボビー・ハケットといえば「Coast Concert」が名盤として名高いけれど、あのレコードだけでなく素晴らしい演奏を聴かせているアルバムは多い。

「Live at the Roosevelt Grill」もそんなアルバムの一枚である。手元に「Live at the Roosevelt Grill Vol.2」しか見当たらなかったので、「 Vol.2」を聴いてみた。

なんともリラックスした、アットホームな雰囲気のライブである。Live盤としては音質もまずまずだ。CDだとボーナストラックで5曲追加されているのだが、それらのトラックも追加されてよかったと思える内容だ。

選曲もいい。ジャズの古いスタンダード中心の選曲の中にボビー・ハケットの名を一躍有名にした「A string of peals」なんかも入っている。ファンとしては嬉しい。

メンバーも豪華である。スイング時代の有名どころが一緒に演奏している。こんな豪華なメンバーのライブを生で聴けた方々がとても羨ましい。これはおそらく、ライブ録音をするから特別に揃えたのだろう。トロンボーンのヴィック・ディッケンソンもピアノのデイブ・マッケンナも堂々と安定したソロをとっている。アンサンブルも息が合っていて、付け焼き刃でやったジャムセッションという感じではない。

こういう、アルバムは聴いていて安心できる。騒がしすぎず、退屈でもない。まあ、こんなアルバムばっかりでもジャズはつまらないのだろうけれど、夜に独りゆっくり聴くにはちょうどいい。まあ、騙されたと思って聴いてみることをお勧めする。ジャズって、せせこましくなく、こんなに豊かだったんだなあと思わせられるアルバムだ。

1970年の録音なのだが、70年代といえば、ジャズもフュージョンの波が押し寄せていたのだから、こんな音楽は時代遅れだったのだろう。それから40年以上経った今聴いてみると、70年代のフュージョンだって時代遅れなわけだから、全然時代遅れな感じはしない。今だからこそ、素直にこのアルバムの音楽に耳を傾けることができるのかもしれない。

一方で、いまの時代にはなかなかこういう、のどかな演奏をしてもいられないんだろうな。いまのジャズミュージシャンもちょっと気の毒だ。