Pee Wee Russellの Ask Me Now!

Jazzに於いてクラリネットとは長い間中心的な楽器であった。1940年代までのことである。

ディキシーランドジャズでも、スイングのビッグバンドジャズでもクラリネットは花形楽器だった。特にディキシーランドジャズでは、コルネットやトロンボーンとクラリネットの掛け合いというのは定番で、音楽にスリルとエキサイトメントを加えていた。らしい。

私は、このところ何年も1950年代以降のジャズばかり聴いているので、クラリネットが出てくるジャズをほとんど聴いていない。クラリネットもののジャズで持っているのは、アートペッパーがアルトサックスの持ち代えで吹いているアルバムぐらいだろうか。

数日前に、YouTubeを見ていたら、北村英治が師の村井祐児と二人でメンデルスゾーンを吹いたりジャズを吹いたりしている面白おかしい動画があった。村井祐児はクラシックのクラリネット奏者である。その二人がお互いの専門分野を解説しながらクラリネットを吹く。

話によるとあのジャズクラリネットの大御所北村英治は、10歳ほど若い村井祐児にクラシックのクラリネット奏法を25年以上も習っているのだという。二人の師弟対決が、面白い。クラリネットという楽器を自由自在に扱う村井祐児に対して、ジャズの奏法の妙味を伝える北村英治。それを、ぎこちなくもすぐに自分のものにしてしまう勢いの村井祐児もすごい。

それで、クラリネットのジャズを改めて聴いてみようと考え、CDラックを見たところ、ほとんど持っていない。

探しに探してみたところ、Pee Wee Russellの「 Ask Me Now!」が出てきた。ピーウィーラッセルといえば、ビルクロウの名著「さよならバードランド」に何度か出てくるスイング時代のクラリネットの大御所、らしい。

このアルバムは1965年の作だから、時代はすでにスイングを過去の遺産としていたはずだ。その影響なのか、このアルバムを聴いているとそこにはスイングの香りがほとんどしない。むしろ、もっとモダンなサウンドである。それは、ハードバップのようなモダンさではないけれど、明らかにスイングジャズとは異なる肌触りの音楽である。

どちらかといえば、ウェストコーストジャズに近いか。ただピアノレスだからそう感じただけかもしれないけれど、そんな雰囲気を感じる。ここにルビーブラフが参加していても、ちっとも不思議ではない、そんな雰囲気だ。

詳しいことはわからないけれど、バリバリのハードバップに疲れた時、たまにこういう音楽を聴いてみてはいかがでしょうか。ここには、なんだかちょっと洒落ていて、少し懐かしいジャズがあります。