読書のウォーミングアップの友 河合隼雄 「大人の友情」

河合隼雄の「大人の友情」を読んだ。

このところ、ずいぶん調子が戻ってきて、やっと本を読めるようになった。療養中ということでいくらでも時間はあるのだけれども、時間があるからといって読書ができるというわけではないらしい。時間がいくらあっても、読書をするためには気力と体力が必要だ。気力と体力がなければいくら活字を追いかけても何も頭に入ってこない。

2ヶ月に渡る入院生活の中で、本は読んでいたけれども、一部の小説を除いてほとんど読書ができなかった。三島由紀夫の「豊饒の海」は全巻読破できたが、読んで心に残ったのはそのぐらいで、あとは途中で投げ出したり、読んでもちっとも頭に入ってこなかった。

退院して、前田専学の「インド思想入門」と、「中村元の仏教入門」を買って読んではみたけれども、どうも最後までは読めなかった。読んでいても何も頭に入ってこないのだ。それでも、まあまあ楽めはしたのだけれど、けれどもやっぱり何も頭に残らなかった。どちらもとても良い本なのだが。

ひと月前ぐらいから徐々に体力が戻ってきて、旅行に行ったり、求職活動を始めたりした。求職活動をするうちに、今までの寡読を反省し、できるだけ本を読むようにした。それも、いままであまり読んでこなかった類の本を。

はじめは、家にあった学生時代の講義の副読本を読んだ。ブランドマーケティングについての本だ。石井淳蔵の「ブランド 価値の創造」を読んだ。面白かったので、つづいて同じく石井淳蔵の「営業が変わる」を読んだ。

内容を咀嚼しきれてはいないけれども、どうやら現代の企業の営業は営業マンの個人の力にたよる営業スタイルではダメで、大きな営業プロセス(潜在顧客の発掘から、クロージング、アフターサービスまで)で営業活動を段階別に図式化し、そのプロセスの中にショールームや技術者を活用しながら営業を行い、営業マンにはその中でサービスとお客様のニーズの関係づくりをする役割を果たすということが求められているというようなことだった。これは、どんなに小さな規模の営業体制でも応用できると思う。うちの会社には管理部門と営業部門しか在りません。技術部門は在りません。と言うことであれば、その会社は技術部門の作り出す商品やサービスとお客さんの「必要なもの」との関係づくりを商品としているので、おのずから、営業部門の役割は定義される。そして、営業活動の何を管理すれば良いかがわかる。

上記の事項は、私が読んでみて感じたことであるので、実際に書かれている内容と相違はあるのだろうけれども、営業マン個人の「売り込むスキル」に頼っている会社をどうにかしたいと思っているマネージャーさん、営業マンの方であれば、読んでみる価値はある本だった。

営業マンをほとんど経験していない私は、営業という業務の基礎を勉強できた。

同時進行的に、守屋洋の「孫子の兵法」を読んでいる。一度読み終わったのだが、この類の本は一度読んだだけでは、読んだつもりになるだけなので、もう一度初めからサラサラと読み直している最中である。すぐに使える知識ではないけれども、役に立つ知識である。

それで、ちょっと疲れてしまい、カンフル剤として河合隼雄の「大人の友情」を読んだ。

大人の友情、それこそ私に欠けていたものなのだ。大人の友情関係が構築できなくて、人間関係でトラブルを起こしてしまう。

河合隼雄は、じゃあ、どうしなさい、とかこうしなさいとは言わない。そうではなくて、「人間関係・友達関係でこういうことあるでしょう?」「それは、こういう心理に起因する感情なんですよ」というアドバイスをくれる。もちろん、紹介されている様々な友人関係での悩みのケーススタディーには、「結局こうなりました」というところも紹介はされている。しかし、それがあなたにとっての正解ですとは言わない。

「そうですか、そうですか。そういう悩みありますよね」「それはとても難しいもんだいですねえ」と読者の話を聞いてくれるのだ。そして、河合隼雄のほうからその問題に結論を出さない。いろいろなケースを紹介し、それぞれのケースの解説はしてくれるのだけれど、それらのケースの解決案は、あなたの問題の解決策ではないかもしれない。それで良いんだ。というのが作者のメッセージなんだと思う。

この本も、一度読んだだけでは頭に入ってこないので、時間をおいて、もう一度読んでみたい。

それぞれの、章も長くなくさらりと読めてしまう。文庫ということもあり、パラグラフが短いので電車で読んだりするのに丁度良い。忙しくて、友達関係の悩みにいちいち向き合っていられない人、忙しくなくても、どのように友人関係との悩みと向き合えば良いのかわからない人(みんなそうか)、ぜひ、この本を読んでほしい。

そして、読んだら感想を聞かせてほしい。

誰か、ペダルスティールギターを堪能できるアルバムを教えて欲しい。

楽器は色々とあるけれど、演奏できたらかっこいいなと思う楽器はそんなに多くない。

トランペットとペダルスティールギターだ。どちらも持っているけれど、ほとんど弾けない。ペダルスティールギターに関しては、全く弾けない。

しかし、YouTubeなんかでペダルスティールギターのデモンストレーション映像なんかを見ると、なんてかっこいいんだ、と思う。あの、なんだか一見シンプルでで、ものすごく複雑なことを簡単にやってのけているのはかっこいい。ペダルスティールギターがリーダーのアルバムというものをあまり持っていないので、なんとも意見が言える立場ではないのだけれど、あの楽器を弾けるようになりたい。

レイプライスなんかのライブ映像で間奏部分をペダルスティールギターが担当しているのを見るたびにため息が出る。なんてかっこいいんだ。

是非、ペダルスティールギターをじっくり堪能できるアルバムを教えて欲しいのだけれど、今の所バディーエモンズのアルバムしか持っていない。もっと、沢山聴いてみたい。

あの楽器のサウンドに憧れるのだ。あのなんとも言えないトーン。なめらかな音階の移動。何をとっても良い。素晴らしい楽器だと思う。あの楽器が、カントリーと、カントリー系の一部のジャズにしか使われていないのが勿体無い。

誰か、ペダルスティールギターをじっくり堪能できるおすすめのアルバムがあったら教えていただきたい。

どうか、お願い致します。

Harry Edisonの良いところ取り

地味だけれど素晴らしいジャズアルバムというのがある。

ジャケ買いもしないような控えめなジャケット、特に目を引くようなメンバーでもない。レーベルもよく知らないレーベル。こういう中にも名盤はある。

私は、今ハリー”スイーツ”エディソンの「Can’t get out of this mind」を聴いている。ピアノがケニードリューベースドラムは、私の知らない方。

けれども、このアルバムが良い。落ち着いた中にも、程よいスイング感があり、ハリーエディソンのボーカルも堪能できる。何よりも、スタンダードばかりやっている。これが良い。

ハリーエディソンといえば、ミュートトランペットが有名だけれど、これがオープンでも弾いている、もちろん、音色は素晴らしい。

この、 Orange Blueというレーベルからは、ビバップ以前のスタイルのフロントマンがモダンなリズムセクションと組んでいるアルバムが多くて、オススメです。

 

時々聴きたくなるヘビメタの代替物 The Hellecasters

バカテクもたまには良い。

いつも聴いていると疲れてしまうけれど、たまに聴く分には良い。むしろ、いつもヘタウマを聴くよりも、いつもバカテクを聴いている方がマシだと思う。

私は、かつてヘビメタ専門のギターショップに勤めていた時があって、その店では常にヘビメタ、それもヴァンヘイレンとかそういったものすごく早弾き系のメタルをかけていた。いつもはバックオフィスにいてパソコンとにらめっこしているのだが、お客さんが来ると店頭に立たなければいけない。そうすると、1日の半分以上ヘビメタを聴かなくてはいけなかった。すごく疲れた。

これが、ヘビメタじゃなくてボブディランだったらどうだったろう?あるいは、もっと疲れていたかもしれない。

かつて私が所属していたバンドのリーダーは麻雀荘を経営していて、その店に遊びに行くと常にカントリーミュージックが流れていた。麻雀荘ならば、何をかけても良いというわけではないだろうけれども、カントリーならまあさして耳障りでもないと思う。まあ、それも好みによると思うけれど、常にクラシックが流れている喫茶店ぐらいの感覚で音楽を聞き流せると思う。

けれども、ヘビメタをいつも聴くというのは辛かった。

しかし、私が、そのギターショップを辞めた後、時々ヘビメタを聴きたくなったりする。どうも、からだにヘビメタが染み付いて、ときどきそれが疼くのだ。けれども、ほとんど聴かない。きくとやっぱり疲れてしまうからだ。

その代わりに、カントリー系のバカテクものを聴く。ブレントメイソン、スティーブワーリナー、ジョニーハイランドなんかだ。

それで、今夜はThe Hellecastersを聴いている。ジェリードナヒュー、ウィルレイ、ジョンジョージェンセンのヘルキャスターズだ。

私は、この3人のギタリストのうち、ジェリードナヒューが一番好きだ。彼が一番カントリー寄りのプレイをする。音も、一番保守的なフェンダーのテレキャスターのサウンドだ。

この方々は、一見ちょっとプログレ寄りのカントリーユニットのようなイメージなのだが、実際に音楽を聴くと、カントリーのテイストでヘビメタをやっているような、いや、ヘビメタのテイストでカントリーをやっているようなサウンドだ。実際、歪ませまくって早弾きなんかをやっている。もはや、テレキャスターのサウンドに留まっていない。

これは、ヘビメタの良い代替物になる。

実際に、ヘビメタが好きな人からしてみれば、これはカントリーに聞こえるだろうし、カントリー好きが聞いたら、これはヘビメタだ。基本的にインストのバンドなのでなんとも定義しづらいのだが、これは、ジェリードナヒューがカントリーくさいことをやっているからカントリーテイストが混ざっているのであって、もしこの人がいなくなってアイアンメイデンのギタリストなんかが入ったら、完全にヘビメタのサウンドに仕上がる。ような気がする。まあ、アイアンメイデンのギタリストが入ったら、どんなユニットだってヘビメタになるか。

この人たちのレコードやらライブ、いったいどんな人たちが聴いているのだろう?そこが気になる。

どうです?この悪そうなジャケ写。 The modern jazz Disciplesが案外良かった。 New Jazz悪くないかも。

ジャズのアルバムはどれもジャズという狭いくくりの中に存在していながら、その一方でレコードレーベルによって随分カラーが違っている。例えば、一番有名なブルーノート、特にブルーノートの1500番代と4000番代はそれぞれに、ハードバップというものを定義してきた名盤が揃っている。ブルーノートの看板を背負うにふさわしい、単なるジャムセッションにとどまることなく、作り上げられたアルバムが多い。

とは言っても、ブルーノートというレコードレーベルはもともとハードバップのレーベルではなくて、もっとトラディショナルなジャズを残そうということでつくられたレーベルだったと聞いたことがある。話によれば、シドニーベシェの録音を残したいがためにアルフレッドライオン作ったレーベルだとか。

しかしまあ、ブルーノートといえば、ハードバップである。

アートブレーキーを筆頭に、ジミースミス、リーモーガン、ホレスシルバーなんかが、ブルーノートの看板プレーヤーとしてハードバップの名盤を数多く残した。そういうファンキーなハードバップをよくできたパッケージに包まれているというのがブルーノートレーベルのイメージである。

ハードバップの名盤を残したということでブルーノートと双璧をなすのが、プレスティッジ。このレーベルは名盤は多いのだが、ただのジャムセッションをそのまま記録しただけの、いわゆるブローイングセッションみたいなアルバムが多い。これはこれで、いい。マイルスのマラソンセッションや、ジーンアモンズの一連のジャムセッションシリーズなんかは、このレーベルでなければ作れないような珠玉の名盤たち(とも、言い切れないのもあるけれど)である。(ちなみに、ブローイングセッションというタイトルのジョニーグリフィンのアルバムはブルーノート1500番代のアルバムタイトルです。紛らわしくてすみません。)

ヴァーブとなると、同じハードバップでももっとコンセプトが決まったアルバム、要するに「企画物」が得意です。あ、「企画物」って、AVの用語なのかな。

それで、私個人としては、断然プレスティッジが好きです。50年代中盤以降から60年代のジャズを聴くのであればプレスティッジばかり聴いてしまいます。

そのプレスティッジレーベルに「ニュージャズ」というシリーズがあります。このニュージャズというシリーズ、何がニューなのかはわかりませんが、ケニードーハムの名盤「Quiet Kenny」なんかがこのシリーズの名盤です。そういう、ハードバップを代表する大名盤もこのシリーズには何枚かあるのですが、中には、なんじゃそりゃ?と思うぐらいマイナーなレコードも沢山あります。

先般入手したのは、このニュージャズのアルバムThe modern jazz Disciplesの「Right down front」。正直言って、このThe modern jazz Disciplesっていうユニット名、CD屋でこのCDを買った時に初めて知りました。カーティスピーグラーというサックス吹きも、名前はどっかで聞いたことがあるような気もしましたが、きっとレコードでは持っていないと思います。もう一人のフロントマン、ウィリアムケリー、この人については、全く知りませんでした。すみません。

そして、このウィリアムケリーの担当楽器が「normaphone」と書いてあります。ノーマフォン、そりゃなんじゃ?まあ、いいか、ジャケがヤバイので買おうかということで買いました。

ノーマフォン、なるわけのわからない楽器がフロントだから、まあ、かなり危ういアルバムに仕上がっているんだろうな、と思って聴きましたら、案外これが良かったんですよ。ファンキーなハードバップでございます。

ファンキーなハードバップな上に、よく練られたアルバムで、楽曲のアレンジ、ソロ回しといいなんといい、素晴らしい。何より、このノーマフォンというやつが決してゲテモノではなく、普通にカーティスピーグラーにハーモニーを加えています。そして、バカテク系のプレーもなく、これといったハイライトもなく。落ち着いて一枚聴き込めるアルバムになっております。

ニュージャズ、案外いいかも。

音楽を通しての「表現」との出会いが日野皓正だった。

学生時代に日野皓正を生で聴いた時の衝撃はすごかった。上野恩賜公園の水上音楽堂で聴いた。その頃、あまりジャズなんて生で聴いたことなかったので、圧倒された。

日野皓正がちょうどアルバム「DNA」を発表したばかりの頃だったと思う。メンバーはよく覚えていないけれど、たしか石井彰がピアノだった気がする。

とにかくトランペットの音がすごかった。なんだかわからんが、圧倒された。音が太くて、でかくて、ドスが効いている。これだけでもうお腹いっぱいだった。

曲はRound midnightとかをやったんだと思う。ジャズに詳しくない私も聴いたことのある曲ばかりやっていた。入場料はタダだったと思う。なんで、あんなすごい演奏をタダで聞けたのか、覚えていない。

あれを聴いた時から、自分が楽器を弾くのは道楽にとどめておこうと思った。20そこそこの人間が、あんなのを聞かされちゃあたまらない。チビっちゃいそうになった。曲なんて、なんでもいい。とにかく、日野皓正がそこにいた。楽器を弾くっていうのはどういうもんなのかを思い知らされたような気がした。

その時、私はジャズ研に入っていて、トランペットをいじっていたが、もう、それから変な野望は起きなかった。もちろん、憧れはあった。日野皓正だけじゃなくて、すべての偉大なミュージシャンに対して。あんな風に、自由自在に、楽器を通して表現できたら何て素晴らしいんだろう、と思った。音楽という言葉を自由自在に使えるだけでなく、それを通して何かを表現出来るっていうのがすごくカッコよく思った。

だから、今でも楽器を弾くこと自体はやめていない。音楽という言葉は自由自在に使うことはできない。むしろ、ボキャブラリーはほとんどないし、間違えてばかりだ。それでも、つたない言葉を発することによって、何かを発散することができる。何かを考えたりすることができる。これが、むづかしくて、文法なんてちっともわからないのだけれど、それでも、何かを口に出せるというのは何も話さないこととは大きく異なる。

ギターでも、トランペットでも、ベースでも、ドラムでも、ピアノでも、ヴァイオリンでも、歌でも、なんでもいい。何かを音楽を通して発露できるというのはいかにすごいことなのか、を日野皓正の演奏を聴いて感じた。

今日、久しぶりに、日野皓正のCD「DNA」を聴いている。あれから15年以上が経過しても、日野皓正の音楽の素晴らしさは、全く色あせない。

音楽という言語を通して、ドスの利かせ方とか、叫びも含めて、何かを表現するということの素晴らしさがここには詰まっている。

有山じゅんじで戦前ブルース入門 ギャロッピングとそのルーツ、ラグタイムスタイル

カントリーやらロカビリーのリズムギターのスタイルでギャロッピングというのがある。ギャロッピングは、別名トラビスピッキングと言われていて、マールトラヴィスが完成させた奏法であるとされている。

確かに、カントリーの世界でギャロッピングを完成させたのはマールトラヴィスで間違えないと思う。しかし、マールトラヴィス本人も、トラビスピッキングはアイクエヴァリー(エヴァリーブラザーズの親父)のギタースタイルを基にしていると語っている。その辺のことは確か、マールトラヴィスとチェットアトキンスとの共演盤「The Atkins-Travis traveling show」を聴けば詳しい話を本人から聴ける。詳しい話を聞かなくたって、このアルバムは素晴らしく素敵で、楽しいレコードだからカントリーのファンじゃなくても一聴の価値がある。

その基となったアイクエヴァリーのギター奏法も、もともとは戦前ブルース、特にラグタイムのギタースタイルから来ている。

オルタネイトベース奏法とか言って、ベース音をド、ド(オクターブ上)、ソ、ド(オクターブ上)と弾きながらコードを鳴らしたりするスタイルだ。別にど、ど、そ、どににこだわらないで、表拍にベース音、裏拍に5度、とか3度とかの低音弦を弾く。

あー、私は音楽の専門知識がないから、どうやって言葉で説明すればいいかわからん。わからんが、そういう、低音弦でベースラインを交互に弾きながら、コードやリードメロディーを弾くのがギャロッピングの基本になる。

これの基はラグタイムのギタースタイルで聴くことができて、ブラインドブレイクやらブラインドボーイフラーなんかがやっている。厳密にはオルタネイトベース奏法のスタイルは違うのだが、マールトラビス、アイクエバリーの原型がここにある。

この、ラグタイムギターというスタイルは、どうも楽しく、自然と陽気にさせられる。マールトラビスのカントリーが陽気なのも、ここから来ているのだろう。私は、元気な時に、時々ラグタイムを聴く。

日本人でも、有名なフィンガーピッキングのラグタイムスタイルを弾くギタリストは数多いるけれど、古くは有山じゅんじなんかが得意としていた。いや、今でも上手いんだけれど。あと、高田渡なんかも、このスタイルで弾いたりしている。

気分が落ち込んでいるときは、白々しくてちょっと聴けないけれど、ちょっと元気が出てきたら、ラグタイムを聴くと元気が出る。

ギャロッピング、ラグタイムスタイルのギターが聴ける推薦盤は、先ほど挙げたマールトラヴィスとチェットアトキンスの「The Atkins-Travis traveling show」。あと、P−Vineから出ている「ラグタイム・ブルース・ギター名作選」これは陽気な戦前ブルースを堪能できる。それと、もう一つラグタイムだけじゃないけれど、上田正樹と有山淳司の「ぼちぼちいこか」。「梅田からナンバまで」こそ、まさにラグタイムスタイル!

特に、「ぼちぼちいこか」は、戦前の作品ではないけれど、戦前ブルースの入門盤として最高です。

Tower of Power, Tower of Power! “Diggin’ on James Brown”

高校時代に、友人がラジオの FM局のプレゼントでTower of Powerのライブのチケットを当てた。あいにく彼はそのコンサートに行けないというので、私がそのチケットをもらった。それが私のTower of Power(以下TOP)との出会いだった。

そのライブを聴いてすぐに私はTOPのファンになった。これほど魅力的なサウンドはそれまで聴いたことがなかった。ロッコのベースがポンポン弾みながらビートを刻み、ドラムのスネアの音は軽く、それに引き締まったホーン隊が煌びやかに飛び出してくる。ボーカルはブレントカーターの頃だったと思うけれど、エミリオたちがサックスを吹きながら入れるコーラスも素晴らしかった。

文句なく、素晴らしいバンドだった。当時は、それがなんというジャンルの音楽なのかすらも知らなかった。ただひたすらノリが良く、聴いているだけで自然に体がウキウキして動く。これほど気持ちの良いライブは初めてだった。

それが、世界最高のソウルバンドだとは知らなかった。知らないで、いきなり本物を聴いた。

ステージが始まる前に、ステージの前に並べられたアルト、テナー、バリトンサックス、トランペット、それらを見ただけで、なんてかっこいいんだってビビった。ビビってチビりそうになった。ステージの床にはセットリストがマスキングテープで貼り付けてあった。

ステージの袖から黒いスラックスに、ベストを着たエミリオが入ってきて、軽くサックスの音を確認したと思ったら、いきなりホーン隊が一斉に入ってきた。そのホーン隊のキリッと揃っていたことがずっと印象に残った。寸分のくるいもないタイミングで、トランペットとサックスが音をヒットする。その間を縫うようにドクのバリサクがブリッと鳴る。なんてクールなバンドなんだ。これはなんなんだ、って思った。

よく覚えているのはDiggin’ on James Brownだ。 “I still be diggin’ on James Brown”のフレーズには震え上がった。ああ、この人たちもやっぱりジェームスブラウンがアイドルなんだ。やっぱりジェームスブラウンってすごいんだ。って思った。

それと、Sexy Soulがかっこよかった。それにIt’s So Niceでエミリオを中心にホーン隊の全員がコーラスを入れるのがかっこよかった。ちゃんと振り付けもあって、これがキマっていた。

キャパ100人ぐらいのホールでオールスタンディング、フリードリンクだった。ああ、大人になったら、またTOPのライブを聴きたい。と思って、今までまだ聴いていない。ロッコが病気になってしまったりしてるから、もう聴けないかもしれない。それでも聴きたい。

そんなことで、今夜は TOPの”Soul Vaccination Live”というライブ盤のアルバムを聴いている。スタジオアルバム”Souled Out”がリリースされて間もなくの頃のライブ録音盤だ。ちょうど、私が高校時代に聴いたライブがこの頃だった。だから、このアルバムに入っている曲のほとんどを私はそのLiveで聴いた。だから、このアルバムを聴くたびにその時のTOPの姿が目に浮かんでくる。世界最高のバンド。

TOPこそ世界で最もシャープなホーンセクションを揃え、力強いグルーブを生み出すリズムセクションを持ったバンドだと思う。

普段は、カントリーばかり聴いている私も、Tower of Powerには目がない。

先日、上海のJz Clubでライブを聴いていたらDiggin’ on James Brownをバンドが演奏した。イントロから、まさにTOPサウンドで、ここ数年、音楽であれほど興奮したのは数回しかない。本物のTOPを聴きたくなった。

Jz Clubでのライブはまだまだ続くようだったが、私はDiggin’ on James Brownを聴き終わるとともに、ビールを飲み干し店を出た。

私はそこまで聴けばお腹いっぱいだった。20年以上前に聴いたTOPのライブの余韻に浸りたかった。それ以上は何もいらなかった。

もう上海には何も心残りがない気がした。

エド山口、モト冬樹兄弟はテレビで最も上手いギター兄弟である

兄弟でともにミュージシャンというのはよくいるけれども、その中でも兄弟でギタリストという組み合わせは結構多いと思う、私の好きなトミーエマニュエルも兄貴のフィルエマニュエルももの凄いギタリストだ。

私の主観からいくと、この世で最も好きなギタリスト兄弟はStevie Ray VaughanとJimmie Vaughanだ。SRVもジミーも独自のスタイルでブルースを奏でる。お互いに影響しあった、特にSRVは兄貴に随分影響を受けたと語っているけれども、二人ともお互いのスタイル・サウンドとは異なる。どちらも甲乙がつけがたいギタリストであるとともに、世界最高のギターヒーローの一人だと思う。

けれども、もう一組、忘れてはいけない兄弟がいる。バブル世代の方々はテレビでおなじみのモト冬樹とエド山口兄弟である。テレビの中の世界で世界一ギターが上手い兄弟といえば、エド山口とモト冬樹だろう。お茶の間で一番聞かれている兄弟である。

エド山口はヴィンテージのモズライトでベンチャーズをベースにしたギターインストの世界では独自の世界観を持っているし、オリジナルアルバムも出している。モト冬樹、はグッチ裕三とのコンビの中でギターを弾いているけれども、これもネッドスタインバーガー時代のスタインバーガーを自由自在にあやつり、どんなポピュラー音楽の伴奏も付けれる実力がある。恐るべし兄弟だ。

以前、YouTubeで兄弟対決を行っていたが、こだわりではエド山口に軍パイが上がり、総合点ではモト冬樹の方がうまかったかもしれない。けれど、私はエド山口の方が好きだ。

ここに、一枚のエド山口と東京ベンチャーズのCDがある。内容は一見するとベンチャーズやスプートニックスのような内容なのだけれど、エド山口のオリジナル曲も光る。そして彼のギタープレーが他の追随を許さないのだ。まさに彼のサウンドに完成されている。

特に、アルバム最後の曲「前科2犯のブルース」が素晴らしい。この曲を聞く為だけでもこのアルバムを買う価値はある。

東京ベンチャーズがなぜ「東京」ベンチャーズを名乗るかはこの曲にかかっている。ピッキングのタイム感覚が、いかにも一時期のギターインストバンドを思わせて素晴らしい。

聴いたことない方は、とりあえず「前科2犯のブルース」を聴いてみてほしい。

物語のおしまいまででは聴いてはいけない

上海の街で、ほかに遊ぶところもしらず、またJz Clubに行った。

今夜も美味しいマティーニを2杯も飲んでしまった。バーテンダーは一昨日とは違う方だったけれど、2杯目には美味しいマティーニを飲ませてくれた。マティーニは好みが分かれるから、バーテンダーとの探り合いが必要なんだろうけれど、本当は2杯も飲むようなカクテルではないから、一杯目でどうなのかで決まると思う。

ファーストステージは渋いジャズの演奏だった。

渋い、というのも渋すぎるぐらい渋かった。とても純粋なジャズを聞けたようで、嬉しかった。

10時半からのセカンドステージは打って変わってファンクバンドがホーンセクションを加えて演奏した。おそらく、土曜日だからちょっとサービスして、ノリの良い音楽をチョイスしているのだろう。のっけから、Bill wihtersの曲やら、ドゥビービブラザーズのファンクナンバーが飛び出して、お客さんをのせていた。

ここに至ると、私も知らない街の住民ではなくなる。おなじみの曲に誘われつい乗ってしまう。

銀座のケントスで遊んでいた時代のことを思い出し、憂鬱な気分になり店を出た。

クリス・クリストファーソンの歌に、物語の終わりまで聞かせないでくれという曲がある。このまま、上海のJz Clubを思い出の場所にしておきたかった。そして、それは、店を出た時にかなったと思う。