結構難しそうなことをやっているけれども、すんなり聴けるアルバム。Johnny A “sometime tuesday morning”

Johnny Aという人については詳しく知らない。スティーブヴァイに見出されてメジャーなアーティストになったということは聞いたことがあるけれど、こういうわりと畑違いというかブルース、カントリー、ロカビリーの匂いをさせるようなギタリストを見つけ出せるのもすごいな。スティーブヴァイと共演もしているらしいけれど、その音源は聴いたことがないのでわからない。きっとすごいんだろうな。

よく知らないけれども、このアルバムが素晴らしいアルバムであることは確かだ。どのように素晴らしいかというと、聴いていて疲れない。ちょっとジャズの香りがするサウンドに、ブルースやカントリーの要素が混ざり合って、気怠く、落ち着いた音楽に仕上がっている。

相当なテクニックを誇るギタリストなんだろうけれども、そのテクニックをこれ見よがしに披露するのではなく、あくまでもアルバムとして「大人な」感じに仕上げてあるのがいい。ギターのサウンドも、まるでアンプに直接プラグインしているかのように生々しく、どこか小さなクラブでギタートリオを聴いているような感じがする。

アルバムはJohnny Aのオリジナル曲が大半を占めるのだが、グレン・キャンベルが歌った名曲「Wichta lineman」や、ビートルズの「Yes it is」などの名曲のカバーが数曲収録されている。

カバー曲の選曲もそうだし、アレンジがこのアルバムに合っている。オリジナル曲とカバー曲のバランスが良く、アルバムをかけっぱなしにして一枚を通して聴ける。

ブライアン・セッツァーとダニー・ガットンとベンチャーズに、ちょっとジミヘンみたいなロックの要素を加えて、そこにジャズのいいところを加えたような音楽と言ってしまうとJohnny Aに失礼なのだが、どんな音楽なのかをざっくり言ってしまうとそんな感じだ。

しかし、このアルバムでのJohnny Aが上にあげたミュージシャンと少し異なるのは、スタイルがちょっとお洒落で、アレンジがジャズ寄りなところだろう。コードの鳴らし方も、ロックなサウンドの中でアクセントとしてテンションを鳴らすというよりも、全体の流れの中にジャズっぽいテンションコードが駆使され、アクセントとしてロックな味付けをしているといった感じだ。

そして、その音楽が嫌味でなく、大げさでなく、むしろどこか親しみやすいのが不思議なことだ。決して難解でない。純粋に音楽として楽しめる。じっくり聴かなくても、小さな音でかけて聴き流す事も出来る。

ギタリストのリーダーアルバムで、インストのアルバムだから、ギターに興味がないっていう人にはちょっと敷居が高いと思われるかもしれませんが、ロカビリーやカントリーのテイストの入ったロックがお好きな方にはオススメです。

適度に騒がしくないアレンジメント Milt Jackson Orchestra “BIG BAGS”

気分をスカッとさせたい時にビッグバンドのジャズを聴くという方もいると思う。私もカウントベイシーなんかを聴くときは、なんだかバッティングセンターに行くような気持ちで、「よし、こりゃいっちょやってやろう!」なんていう訳のわからないテンションで聴いたりする。

カウントベイシーの音楽は、元気があるときのストレス解消なんかには丁度いい。たまにバラードなんかが入っていて、それもいい箸休めになって、自分が演奏しているわけでもないのにいい汗がかける。

まあ、一言にビッグバンドとは言ったって、ボブミンツァーみたいなものもあるし、なんとも言えないのだが。かくいう私はさほどビッグバンドジャズに詳しくはない。友人で学生時代にビッグバンドでベースを弾いていた奴がいるので、彼に色々教わって聴いたりもしたのだが、ちゃんとアルバム一枚通して聴いたのはあまりない。何故なら、疲れてしまうのだ。

このブログでは、できるだけそういう疲れてしまうような音楽は取り上げない。もっと、カウチに座ったり、座布団に寝そべったりして聴いて、じっくり集中しなくても聴けるようなものを紹介したい。何故なら自分自身、疲れて気力が湧かない時、仕事から帰ってリラックスしたい時、ただ単に音楽を聞き流したい時に丁度いい音楽を求めているからだ。いつもがいつも音楽と全力で格闘できるわけではない。時には、音楽が流れるのに任せておいて、自分はゆっくりしたい。だからといってどうでもいいような音楽じゃ物足りない。

そこで、第一弾として紹介するのが、Milt JacksonのBig Bagsというアルバムだ。

できるだけ騒がしくない音楽から紹介したかったのだが、いきなりビッグバンドジャズとなってしまった。しかも、Milt Jacksonはヴィブラフォン奏者でもかなり音数が多めのビバップとかそういう系の人だから、一見、騒がしいジャズを期待するアルバム。Roy Ayersとかそういう人のアルバムならもっと、都会の洗練とベルベットのようなサウンドを手に入れることができそうなのだが。

しかしながら、このアルバムは少々くたびれている時でも聴ける。7曲目までなら特に。

確かにアレンジメントをしているTadd Dameronと Erie Wilkinsは結構ビシビシバシバシ系のアレンジを書いている。このアルバムだって「Star Eyes」のアレンジなんかは、カウントベイシーオーケストラを彷彿とさせる音楽で、ドラムのConnie Kayもどんどん攻めてくる。8曲目の「Star Eyes」以降は結構うるさい。この辺からエキサイトしてきて、ちょっと騒がしいジャズになってくる。

けれどもアルバムとしては、何かしながら、例えば本を読みながらでも聴いていられる音楽に仕上がっている。それは、Milt Jacksonのリードが程よく抑えられているからだろう。抑えられていると言っても、手を抜いているというわけではない。むしろフレーズは澱みなく出てきているし、すごくスリリングなヴィブラフォンを聴かせている。

けれども、そこをやりすぎないで、ちょうどいいところで音楽を作っている。泥臭くなりすぎないし、バリバリしすぎない。けしてサラリとした音楽ではないのだが、音楽をごり押ししてこない。どちらかといえば、バックのビッグバンドがちょっと前に出てきていて、ミルトジャクソンは、控えめな印象を受ける。この人、そんなに控えめな演奏する人でもなかったと思うけれど。

一言文句があるとしたら、私の手元にあるCDでこのアルバムを聴いていると、ボーナストラックとして「Round Midnight」と「Star Eyes」の別テイクが入っているのだが、それがそれぞれの曲の後に続けて入っている。同じ曲を2回続けて聴かされるのだ。これは、ちょっともったいない。

私は、  CDにボーナストラックとかは要らないと思うのだ。アーティスト(アーティストとは奏者なのか、プロデューサーなのかはその時その時で変わるが)が意図した通りにアルバムが聞ければそれでいいではないか。

まあ、そういう問題は置いておいて、都会の喧騒に疲れた大人のための ビッグバンドジャズとして、「Big Bags」は悪くない。