生きるって

我が家には金がない。

金がない一番の理由は、私がいつも無駄遣いをしてきたせいであるし、それは弁明のしようもない。今まで、社会人になってから月末にお金が残っていたことはない。当然貯金もない。

だからと言って、心まで貧しくなってしまってはいけないので、心までは貧しくならないように気をつけて入るけれど、心を豊かにできるのは唯一、金である。

思えば、今まで家庭のために何もしてこれなかった。稼ぎが少ない私は、妻の収入に頼り家計をつないできた。

その妻も仕事を辞めてしまった。今となっては本当に貧乏暮しになってしまった。

ある時、自宅でくつろいでいると、妻がおもむろに話を始めた。

今日は10日だけれど、我が家には今月あと8,000円しかないのだよと。あと八千円で25日の給料日までに何とか凌がなければならないのだよと。それで、あんたは昨日も酒を飲んできたじゃないかと。

私は、そんなしみったれた話が嫌になってしまい、妻の財布から三千円を抜いて酒を飲みに家を飛び出した。

安酒屋で酒をしこたま飲んで12時頃に帰宅すると、ぼんやりと家に明かりがついていた。

家の中は、裸電球で照らされ、ダイニングテーブルの椅子に妻が座っていた。初めは気付かなかったが、妻は造花作りの内職作業を続けていた。私は、すっかり酔いが覚めてしまい、とりあえず流し台に行き、コップに水を汲み勢いよく飲んだ。

妻は、小さな声で私に、

どうだった?お酒飲んで楽しかったかい?美味しいお酒は飲めたかい?

と聞いた。私はつまらなくなってしまい。

そんなの楽しくなんかはないやい。酒を飲んで気持ち悪くなっただけだよ。

と吐き捨てて、寝床に着いた。貧乏とは自家中毒ようなもので、一度そのスパイラルに入ると、どんどん悪化していくものなのだ。

たまには、アジの干物を夕ご飯に食べたい、今日この頃である。

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