Michael BubleのMe and Mrs. Jones

今日はMichael Bubleを聴いている。

ブーブレなんて、今となっては時代遅れ感すらあるかもしれないけれど、聴いてみるとやっぱり上手い。音楽のサウンドには流行り廃りはあるのかもしれないけれど、歌の上手い下手はある程度絶対的な尺度なのかもしれない。上手い歌は聴いていて気分がいい。

Michael Bubleは昨年の夏頃に聴き始めた。それまでは、銀座の山野楽器でかかっていたのを聴いたことはあったけれど、自分でCDを買って聴くというほどのことはしなかった。何となく、山野楽器でかかっている音楽はヒップじゃないから意図的に避けていたのかもしれない。

昨年の夏に、ブーブレの歌うMe and Mrs. JonesをYouTubeで聴いたのがきっかけだった。Me and Mrs. Jonesは私が最も好きなバラードの一つだ。あの曲は淡々としている中にドラマがあるのがいい。オリジナルはBilly Paul。フィリーソウルの大御所だ。

曲のタイトル通り、Meと Mrs. Jonesの物語だ。毎日同じカフェで6:30pmに逢う二人。まさにソウルミュージックにぴったりの世界観である。Billy Paulの熱すぎない歌が良い。ソウルシンガーはパワフルに歌い切る人が多いけれど、この曲で彼は、少しナイーブに、ちょっと抑え気味に唄う。

私が初めてこの曲を聴いたのはTOKUという、ジャズトランペッターでボーカリストのCDだった。私が学生時代、テレビで彼が歌うのを聴いて、新譜で買った。TOKUのけだるいボーカルが、この曲にぴったりと合っていた。何とも豪華なことにRoy Ayersのヴィブラフォン、Grady Tateのドラムがバックを務めていた。このRoy Ayersのヴィブラフォンが良い。ベルベットのように曲の合間をすり抜けていくような音色。TOKUのBewitchingというアルバムだった。

ブーブレのこの曲も素晴らしい。ビッグバンドアレンジなのだけれど、ミュートトランペットが、この曲に可愛らしさを加えている。プロデューサー、デヴィッドフォスターの転がるようなピアノもさりげなくて良い。クライマックスでのビッグバンドのトゥッティのところでブーブレはぐっと抑えて唄いきる、そこがまたかっこいい。

Michael BubleのCall me irresponsibleというアルバム。まさに彼のボーカルの魅力が詰まった傑作だと思う。さすがはデヴィッドフォスタープロデュース、甘く、切なく、けれども甘ったるすぎることなく。オトナのアルバムに仕上がっている。エリッククラプトンのWonderful Tonightも含めて、スタンダードナンバー揃いの選曲も良い。

Me and Mrs. Jonesを聴いた、とても暑かった夏はすぐに過ぎ去り、秋になった。そして、早くもまた今年も夏になる。このアルバムは暑い夏の夜に程よく合っている。東京は明日から梅雨入りと聞いているけれど、また今年も、死なない程度に暑い夏がやってくることを心待ちにして。