久しぶりにアルバム1枚通して聴いた Gershwin, Shavers and Strings

Charlie Shaversという名トランペッターについて、詳しいことはよく知らないけれど、とにかくトランペットが上手くて、音も煌びやかな音からしっとり聴かせる音色まで的確に使い分ける凄いやつだ。

私は、ずっとこのCharlie Shaversが苦手だった。どうも上手すぎるので、癪にさわるというか、なんというか。世の中にこんなに自在に楽器を弾けるやつがいるというのがどうも受け入れられなかった。

しかし、先日、ちょっとした気まぐれから、この「Gershwin, Shavers and Strings」というアルバムを買ってきて、聴いたところ、やっぱり良いものは良いのだという当たり前のことを再確認した。

どっぷりとジャズを聴こうと思うと、このアルバムは肩透かしを食う。なぜなら、ここにあるのはジャズというよりもムード音楽だからなのだ。ムード音楽、と聞くと多くの人は、「じゃあ、それならやめよう。時間の無駄だ」と思ってしまうかもしれないけれど、ここまで完成度の高いムード音楽を聴いてみると、心を奪われてしまう。

ガーシュウィンの曲集にちなんで、イントロが「ラプソディーインブルー」の引用だったりして(それも、何曲もそのパターン)どうもなんとなく胡散臭いのだけれど、その怪しさも含めて、遊び心があるムード音楽に仕上がっている。ジャズの要素が全くないかというと、そんなこともなくて、メロディーをフェイクしたり、アドリブソロがちょっとだけ入っていたりして、それはそれでCharlie Shaversのジャズ魂も確認できるのだけれど、そういう難しいことは抜きにして、ジャズが苦手な方にも楽しんでもらえそうな内容に仕上がっている。

トランペットもののムード音楽といえばニニ・ロッソなんかを連想してしまいそうな感じもするのだけれど、ああいうヨーロッパ系の(ニニ・ロッソがヨーロッパなのかどうかは知らないけれど)ムード音楽とは一線を画す、古き良きアメリカ音楽に仕上がっているのもこれはこれで貴重だ。

Charlie Shaversの他のアルバムと違うところは、彼がテクニックをこれでもかとひけらかさないところ。それでいて、完璧なコントロールのもと危なげなくトランペットを吹ききっていて、聞き惚れてしまった。

このところ、アルバム一枚をゆっくり聴いたことなど久しくなかったけれど、このアルバムは、最初から最後まで通して聴いてしまった。