Walthamの懐中時計が好きで、2つばかり持っている。
懐中時計は、カチカチカチカチしっかりと時を刻んでくれているようで、好感が持てる。ラーメン屋に入り、注文をした後に店の親父が自分のラーメンをしっかり作ってくれている時の安心感のようなものを、あの生真面目な懐中時計の音を聞いていると感じる。
ところが、悲しいことに、2つのWalthamのうちの片方は、1日に20分以上も遅れてしまうのだ。これでは使い物にならない。そのため、所有してから一度も持ち出したことがない。
時計屋に修理に出そうと思い、Web見積もりを取ったところ、オーバーホールだけで3万円と言われた。3万円といえば、かなりの金額である。おいそれと出せる金額ではない。それで、仕方なく、そのままにしてある。
これではあまりにも不憫なので、時々巻き上げて、動かしてはいるのだけれど、ある程度正確に時を刻んでくれなければ、時計は無用の長物である。
Walthamの良く調整された懐中時計は5万円も出せばある程度のものは手に入るので、今更3万円をかけて調整に出すメリットも感じられずに、机の引き出しにしまってある。
もう一つElginの金時計も持っている。これは、ちょっとアールデコ調の時計で、デザインは気に入っているのだけれど、不動品である。巻き上げれば動いてくれて、時をある程度正確に刻んでくれるのだけれど、分針が止まってしまうのだ。これも、オーバーホールの見積もりを出したら3万円と言われた。
どちらかといえば、こちらの方が小型で使い勝手が良さそうなので、治したいのだけれど、3万円という金額に気後れしてしまい、修理に出せずにいる。庶民がそんなに時計ばかり持っているのは身分不相応なのだけれど、うちは祖父が時計修理工の端くれだったので、時計には思い入れがあるのだ。
実は、もう一つ、ジャガールクルトの懐中時計もある。
こちらは、完全なる不動品。手に入れたときは正確に時間を刻んでいたのだけれど、ある時急に時を刻まなくなった。これは、それほど高価ではなかったのだけれど、私の持っている時計の中では最高級品である。こういう時計を新品で買うことは絶対にないとは思うのだけれど、新品で買うと数十万円ぐらいするのだろうか。
こちらは、オーバーホールの見積もりが5万円と言われた。
5万円、さらにおいそれとは出せない金額である。5万円もあれば、そこそこ使える新品の腕時計が買える。
これらの、時を正しく刻まない懐中時計を眺めていると、
よし、ちゃんと働いて、ちゃんと稼いで、いつかはこれらの時計を修理できるだけ経済的な余裕を持ちたい。と思うのだ。
そんな日が来るのは何年後になるかはわからないけれど、とにかく、いつか早いうちにとりあえず自分で満足できるだけしっかりと社会に貢献できる仕事ができるようになりたい。