黒は美しい Gibson Les Paul Custom 1974

私はレスポールについてはとくにこだわりはなかったのだけれど、スタンダードより、カスタムのルックスの方が好きである。どうも、あの赤いサンバーストというのが好きになれなくて、ヘリテージチェリーサンバーストのレスポールは一台ももっていない。そもそも、レスポールは黒のデラックスと、黒のカスタムしか持っていない。

黒のカスタムは、1974年製の1台で、パンケーキボディー、3ピースマホガニーネック仕様である。なかなか重いボディーでこれで1時間も立って弾こうもんなら、かなり疲れる。そのため、あまり外に持ち出してはいない。

しかし、ギブソンの黒はカッコ良いので、好きである。あのBBキングのルシールの黒と同じ黒だと思うと、どうも心が熱くなる。使い込まれたレスポールの黒は、見ていて飽きないし、弾いていても、なんだかしっくり来る。私にとっては、あの赤いサンバーストよりもモノとしての魅力は高いのではないかと思われる。

黒のフィニッシュは、塗装の腕前がばれる。商売柄、黒いピアノはしょっちゅう見るのだけれど、近年のピアノの黒ぬりつぶしはどうも高級感がない。塗装が厚塗りすぎるのだ。特に、黒の上に吹いているクリアが分厚いとカッコ悪い。ヤマハの黒塗りは、まあ、高級品ではないから仕方ないとして、スタインウェイですら、今の仕上げはどうもイマイチ高級感がない。同じことは木目のピアノにも言えるのだけれど、クリアの吹き方が分厚いと、安物に見えてしまう。

数ヶ月前に、1920年代の黒のセラック塗りのピアノを見たのだが、美しかった。ヘタな木目のピアノよりも木の感じが出ていて、素晴らしかった。黒の塗装は薄く、かつ、丈夫でなければなるまい。と、そう感じた。

ピアノだって、真面目に塗装すれば、ああいう風に美しい黒を出せるのに、今のピアノはどうも安っぽくてダメだ。ギブソンの70年台前半までのあの黒の塗装を是非見習ってほしい。