落ち着いて、安心して聴けるJames Taylor

James Taylorこそ、いつ聴いても疲れない音楽を提供し続けているソングライターの一人だと思う。疲れないというだけでなく、癒しのようなものを提供してくれる。

作品が多いので、全てを聴いたわけではないけれど、私のレコードラックには入っている彼の作品は、どんな時でも安心して聴ける。時として、すこし刺激が少ない気がするから物足りなくも思うのだけれど、疲れている時や疲れが取れない日々に聴くのにはちょうど良い。

音楽はある程度の刺激があったほうが面白い。モダンジャズはスリリングなアドリブによる対話がなければ面白くないし、クラシックだって緊張と緩和のバランスの中でドラマチックに変わりゆく音楽の世界を楽しめたほうが面白いと思う。ロックなんかは、これは刺激を求めて聴いているようなもんだし、私の好きなカントリーミュージックなんかは比較的刺激が少ない音楽だとは思うけれど、ロック同様の刺激的な側面がある。

ジェームステイラーの音楽は、そういう側面から聴くと、ちょっと物足りないと感じる。彼はギター弾き語りで淡々と歌う。バックを固めるミュージシャンもそれを意識して比較的おとなしいアレンジの中、危なげなく曲を盛り上げる。彼の作品はセルフプロデュースが多かったかどうだったかは忘れたけれど、どの作品もそういった落ち着いてまとまっている。我々リスナーもそれを期待して聴いているわけだし、レコードもそれを裏切らない。そのバランス感覚の上に、ジェームステイラーの音楽は常にあると言って良い。

だから、どの一枚でも良い。疲れた時にレコードショップで彼のアルバムを手にしたらまず問題なく、そういう、落ち着いてまとまった作品を聴くことができる。

思えば、私が初めてジェームステイラーの音楽に出会ったのは、中学1年の時だった。担任の先生が朝のホームルームの際に、彼の学生時代のお気に入りの曲として「You’ve got a friend」をかけてくれた。私は、一度聴いた時からそのサウンドが好きになった。その頃から、私は疲れていたのだろうか。

そして、それから25年以上が経った今でも、彼のCDをかけたりレコードに針を落とすとあの時と同じサウンドを聴くことができる。彼の音楽は、私が歳をとっても、印象が変わらない。それだけ、どこか強く芯が通った音楽なんだろう。