嗚呼、ラージヘッド、3点止め、Fender Stratocaster 1974!

フェンダーというギターメーカーは間違えなく世界を代表するエレキギターメーカーである。テレキャスター、ストラトキャスター、ムスタング、ジャズマスター、ジャガー、もう、考えただけでため息が出てくるぐらい魅力的なギターを世に送り出し続けている。エレキギターを弾く人で、フェンダーというブランドを知らない方はほぼいないだろう。

私は、Fenderのギターが大好きである。ギブソンも大好きであるけれど、フェンダーは素晴らしいと思う。なにより、フェンダーがすごいのは、時代ごとにサウンドキャラクターは若干異なるのだけれど、常にフェンダーらしい音がなる楽器を作り続けてきていること。様々なギターメーカーがフェンダーのギターを似せた商品を出しているけれど、それらのギターを弾いた後にフェンダーのギターを弾くと、「嗚呼、フェンダー!」という音がする。他社製品も素晴らしいサウンドが出るモデルはたくさんあるけれど、フェンダーのサウンドは真似しても真似できない。

50年代のフェンダーは高いので、ちゃんと弾いたことはないのだけれど(以前勤めていたお店にあったので、触ってみたことはある)、素朴なサウンドでありながら、やはり今日私たちが知っているフェンダーの音がする。60年代のフェンダーのサウンドが、私たちには一番馴染みがある音かもしれない。60年代も最近は100万円をゆうに超えてしまい、手が出せなくなってしまった。つい数年前までCBS以降なら60万円ぐらいだったのに。

70年代のフェンダー、かつてはゴミ同然の値段で店に並んでいた。新品のフェンダーが20万円代中盤ぐらいだった頃、70年代のフェンダーは10万円前後だった。特に76年以降の重いボディーのストラトなんかは、大抵10万円以下で、店の片隅に邪魔そうに何本も並んでいた。誰も見向きもしなかった。

私は、どうも、この70年代のフェンダーが好きである。今まで、何台も70年代のフェンダーを買ったり売ったりしてきた。その、トレブリーなサウンド、作りの良い加減さ、75・76年以降のやたらと重いボディー、どれを取っても好きである。3点止めのストラトも、嫌いではない。あれは正直フェンダーの設計ミスなんじゃないかと思わせられるところもあるけれど、10年弱あのデザインで作り続けたんだから、それなりに3点止めにしていたメリットもあるんだろう。

70年代のフェンダーは当たり外れが激しい。買っても、そのままでは使えない代物もたくさんある。かつて、ゴミ同然の扱いをされていたもんだから、改造されている個体も多い。パーフェクトな個体をほとんど見たことがない。

私の手元に1974年のストラトキャスターがある。こいつがかなりイケている。73年ぽいシリアルなのだけれど、74年なのかもしれないので、とりあえず74年ということにしている。私は、ギターといえばカントリー音楽しか弾かないので、基本的にフェンダーといえばテレキャスター党なのだけれど、このストラトはなぜかとても気に入っている。なんともストラトらしい音色がするし、ボディーは軽くて持ちやすいし。3点止め、ラージヘッドというところがなにより不遇の時代を乗り越えてきた感があって好きだ。

サウンド、ルックスともに70年代のフェンダーが好きなのだけれど、近年市場価格が上昇している。かつての倍以上、75年以前の個体はかつての3倍以上の値段になってしまっている。かつては、ただの中古ギターだったものが、あろうことかヴィンテージギターと呼ばれて売られていたりする。70年代はヴィンテージ(当たり年)でないところが好きなのだが。楽器として実用でガンガン使えるところが好きなのだが。

そのうち、状態の良い70年代前半のフェンダーも50万円とかになる日が来るのだろうか(いや、ならないか)。70年代のフェンダーは、ケースに大事に保管する類の楽器でないところが好きなのだが。

ちなみに、70年代のフェンダーを愛用しているというギタリストにほとんど会ったことがない。むしろ、70年代のはキャラが濃すぎて使いづらいとおっしゃる方が多い。こういう、みんなに好かれていないところも、妙な親近感が湧いてきてしまう。

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