セリーヌへと発射される前の覚書

世の中便利になったもんで、ついに人類は世界につながるタイプライターを手に入れた。

ジャックケルアックが超高速で、徹夜でタイプライターを叩いたところで、世界にその文字が伝わるのは何十年も後になってしまったという時代を超えて、今私たちは世界につながるタイプライターを持っている。

このタイプライターから垂れ流れる言葉たちは、非常に無責任で、誰の了承も、編集も、校正も通さずWorld Wide Webに発射される。そして、このタイプライターから垂れ流される言葉を受け取る方々は、私の会ったこともない方々であるという意味では、かつてのジャックケルアックが叩いていたタイプライターと同等の性能を持っているのだ。

この記事を読んでくれる方が何人いるのかはわからない。もしかしたら、私だけが読んで終わりかもしれない。けれども、これは確かに世界へ罵詈雑言を叩きつけることもできる強力な武器であることにかわりない。そして、有史上一度もおとずれたことのない、世界平和さえも、現実のものにできるかもしれない優れものなのだ。かつてのような、馬鹿げたタイムロスはない。サーバーがぶっ壊れない限りは恒久的に残る文書を書ける。首相だろうが、大統領だろうが、ローマ法王だろうが、私であろうが、世界へ向けて発信できる言葉であることにはかわりない。

セリーヌを買ってきた。

ずいぶん昔に読もうと思い、挫折したセリーヌ。

好きだった女の子の本棚に立っていたセリーヌ。

チャールズブコウスキーが世界最高の作家と評したセリーヌ。

これから、ステレオのボリュームノブを10時の位置にして、スティーリーダンを聴きながら、セリーヌへと旅立とうと思っている。

上記のような支離滅裂な文章すら残ってしまうタイプライターのキーを叩きながら、私はセリーヌへと発射されるのを今か今かと待っている。

中央線の藻屑になってしまうことも検討した。

隅田川の底に深く沈んでしまおうかとも考えた。

明治通りで、挽肉になるのも悪くないかと思われた。

それでも、今日は天気が良かったから、そういうのは全部やめにして、セリーヌに身をまかせることにした。

ちょうど、朝にブラッドベリを電車の中で読んでいて、散々泣かされたので、今度は、もっと強力な一発をキメてやれば、このクソみたいな世の中の全てがぶっ飛ぶ気がした。

中央線の藻屑になろうとしている方は、これから私と一緒にセリーヌを読みましょう。

そして、この場所でまた、セリーヌの感想を交わし合いましょう。まだ死ぬには惜しい読み物が、この世界には沢山あります。

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