JBL 4312A を購入。とりあえず、Bill Evans Trioを聴く

約17年ぶりにスピーカーを替えた。

二十歳の春に上京した際に国立のオーディオユニオンでTannoyの安いスピーカーを買ったのだが、それに特に不満もなく今までやってきた。もちろん、満足していたわけでは無い。しかし、家ではあんまり大きな音は出せないし、聴く音楽も、カントリー、ジャズ、ロックやらクラシックはては演歌までだから、とくに偏りの無い安物のTannoyの音に慣れていたのだ。

偏りの無い、それでいて特に魅力も無い音であったのだが、やはり20年近く使っていると少しずつ物足りなくなってくる。特に、ジャズを聴くときのベースの頼りなさ、シンバルのシャリシャリ感が物足りなくなった。演歌だって、もっといい音で聴きたい。低音が安定するスピーカーで聴きたい。なんて思うようになった。

JBL 4312Aは期待通り低音が安定している。安定しているというよりも、大迫力である。JBLは低音が大迫力であるという評判は確かなようだ。部屋中にくまなく行き渡るベースの音。今までには無かった感覚だ。まるでライブハウスのようだ。

特に、アナログレコードを聴いたときに、今までは低音が物足りなかった。最近のCDはわりとドンシャリ系の音作りなのか知らんが、割とくっきりはっきり聴こえる。小型の Tannoyでは十分な低音は鳴らせないけれども、それでも、都会の喧騒に埋もれずにベースの音、バスドラの音が聴こえるような気がしていた。

しかし、 JBLに変えて初めてわかった。今までは低音が聴こえていなかったのだ。高音も聴こえていたのはほんの一部で、本当はレコード中にもっと豊かな高音部も隠れていたのだ。

JBLは決して万能スピーカーでは無いと思う。このスピーカーで聴くとバランスが悪くなってしまう音楽、特にクラシックなんかではあるだろう。オーケストラものやオペラなんかには向いていないと思う。思い込みかもしれないけれど。コンサートホールでオーケストラを聴くような繊細な音はこのスピーカーからは鳴らないような気もする。気のせいかもしれないけれど。

けれども、一旦それがモダンジャズとなると、このスピーカーを凌駕するものはこのクラスではなかなか無いんじゃ無いか。この、ピアノトリオを聴いているときの感覚が、ライブハウスのようだ。ウッドベースの最低音はもちろんだが高音部の音までパサパサしないで聴こえる。シンバルの音も、綺麗に聴こえる。ビッグバンドを聴いていると、生で聴くビッグバンドとは違うんだけれど、ビッグバンドらしい音圧に浸ることができる。

何よりも、フランクシナトラの声がくっきり聴こえる。さすがJBLである。フランクシナトラはJBLで鳴らすためにマイクの向こうで歌っているのでは無いだろうか、と思わせるほどシナトラの歌がドッシリとして聴こえる。ああいう、バリトンボイスにはうってつけのサウンド作りなんだろう。

今夜は、ビル・エヴァンスの「California here I come」を聴いている。ピアノトリオの名盤である。エディーゴメスの音が良い。今までエディーゴメスなんかを良いと思ったことはほとんど無かったのだけれど、なかなか良い。フィリーの音も良い。特にブラシの音が今までのスピーカーよりザラザラ感が出ていて良い。スネアのスナッピーの音がクリアだ。ビル・エヴァンスの音をどうとかいうのはよくわからないけれど、パーフェクトだ。

とりあえず、ビル・エヴァンストリオはJBLに向いているということは十分にわかった。