CTIレーベルからこういうアルバムが出てきて本当に良かった Gerry Mulligan Chet baker 「Carnegie Hall Concert」

私は今まで勢いだけで生きてきたようなところがあるから、勢いを失うと何にも残らなくなってしまう。

半年ほど前からパワーが減退し、何もする気が起きなくなってしまった。正確には、何もする気が起きないというのではなく、する気が起きても、できない日々が続いている。

世の中の大勢の人たちも、する気が起きてもできない中で何とか頑張っているんだから、私も何とか頑張るべきなのだろうけれども、ついつい自分に甘えてしまい、何もやっていない。そのこと自体が、自分をさらにダメにしてしまっている。外にも出ない仕事もしないで毎日を過ごしている。

5年ぐらい前から、こんなダメ人間はまずいだろうと思っていたのだけれども、ついに、そのダメ人間にも決定打が打ち放たれ、本当のダメな毎日を送っている。

こんな時だから、本を読んだり音楽を聴いたりするべきなのだけれど、それもできていない。無気力である。

それで、一日中過ごしていると、やはりどこか体の中でストレスを感じてしまい、夜な夜なブログを書いたりしている。ストレスというのは本来なら、外からの刺激があってそれに対する反応として発現するものなのだろうけれど、私の場合、自分の何もやっていなさが、過去や未来の自分像に跳ね返り、自分を責めることによってストレスとなる。

そんな状態でも、今夜はGerry MulliganとChet Balerが1974年にCarnegie Hallで行ったコンサートのライブ盤(CTIレーベルから出ている)Gerry Mulligan Chet baker 「Carnegie Hall Concert」を聴いている。こんな状態でも聴ける音楽があるというのは素晴らしいことだと思う。ジェリー・マリガンとチェット・ベイカーには感謝せにゃいかん。

このアルバムのいいところは、50年代に人気ユニットを組んでいた二人の再会コンサートであることもそうだが、バックのメンバーが当時の CTIの誇る凄腕ミュージシャン勢ぞろいというところだろう。

当時フュージョン界をリードしていた凄腕ミュージシャン、ピアノ Bob James、ギター John Scofield、ベース Ron Carter、ドラム Harvey Mason、という豪華なリズム陣がバックを固めている。

そのせいもあり、アレンジがモダンで、サウンドもいわゆる50年代のジェリー・マリガンとチェット・ベイカーのユニットとは異なっている。Dave Samuelsのヴィブラフォンもいい味を出していて、思いっきり70年代の  CTIのサウンドになっている。

そのことには、賛否両論があると思うけれども、ジェリー・マリガンも、チェット・ベイカーも70年代以降に素晴らしい音楽キャリアを残しているし、もともと、どんなフォーマットでやっても素晴らしいサウンドを作れる二人なので、私はこういうレコードができたことを感謝している。ぜひ、この二人を、こういうバンドの中で聴いてみたかった。

CTIのスタジオアルバムはやけにストリングスが入ったアレンジが目立つので、そっちの方に耳が行ってしまうのだが、Jazzとして完成度の高いアルバムも多い。それらについては、後日紹介するとして、このアルバムを聴いていただければ、CTIのジャズの美味しいところを楽しんでいただけると思う。

何よりもボブ・ジェームスのピアノ(エレクトリックピアノ)のサウンドが印象的なのだが、ここにジェリー・マリガンのバリトンサックス、チェット・ベイカーのトランペットが絶妙に絡んでくるところは筆舌に尽くしがたい。

50年代のズンズン前に進み続けていたジャズもいいけれども、こうして、一旦ジャズシーンが落ち着いて、もっぱらフュージョンサウンドが流行るようになってきた頃に、50年代スタイルのジャズを再演したら50年代のアルバムでは出し切れていなかったモダンジャズの魅力が見えてくる。

このアルバムが、フュージョンアルバムになっていないこと、 CTIの名盤の多くもどちらかというとフュージョンサウンドよりももっと古いスタイルのジャズの良さが聴こえてくるものが多い。その辺がプロデューサーのクリード・テイラーのセンスなんだろう。

クリード・テイラーこそ、70年代になって50年代のジャズの魅力を再発見したプロデューサーなんだと思う。そして、その50年代のジャズを50年代のメンバーと演奏させるのではなくて、バックは腕利きのフュージョンシーンで活躍しているミユージシャンで固めるというのも、成功しているアルバムが多い。

50年代のバリバリのハードバップサウンドではない、70年代の元気だったフュージョンの音でもない。それらをミックスして出来上がったちょっと中途半端な音楽だ。だからこそ、肩肘張らずにゆっくり音楽を楽しめる音楽に仕上がっているんだろう。

本当の凄腕は、その腕の活かしどころを知っていて、ジェリー・マリガンとチェット・ベーカーはそういう時代の波を超越しているところで音楽を奏でることができるミュージシャンなんだろう。

とにかく、意気消沈している時に、オススメのアルバムです。

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