アメリカが好きじゃなくても心にしみるアルバム Ray Charles “Sings for America”

私はアメリカ贔屓ではない。確かにアメリカは豊かな国だし、素晴らしいアートやエンターテイメントを生み出し続けているとは思うけれど、だからってアメリカが好きというわけではない。

アメリカ合衆国という国が、実際のところどんな国なのかははかり知れない。あれだけ大きな国土で、あれだけ人口がいて、いろいろな文化圏から移住してきた人たちのいる国である。わからないのも当然だ。世界の経済を動かす大きな企業や、投資家もいるし、世界の治安を握っている軍事力もあれば、政治力もある。ああいう国は好きか嫌いかよりもむしろ恐れのようなものを感じる。得体の知れない大きなものへの恐れである。

その一方で、アメリカの生み出した素晴らしいものもたくさんある。歴史は十分深い国とは言えないかもしれないけれども、そんなことは問題にならないくらいすごいものを生み出している。それは、音楽やら、アートなんかだけではなく、アメ車だったり、ファッションだったり、文化、工業製品、サービス、システム何においてもすごいものを生みだしてきていることは確かだ。そして、私は望むと望まぬとに関わらず、それらの恩恵を受け、それらにインスパイアされて日々の生活を送っている。

アメリカを賛美するような商品(パッケージと言ったほうが良いか)は多い。その中でもとりわけ、音楽、アート、ファッションなんかに関わる商品は、その「胡散臭さ」も含めて私の目を惹く。星条旗が大きくあしらわれたTシャツ、アメリカ讃歌なんかに接する時、その愛国心への違和感によるなんだか背筋がぞっとするような感覚と、愛国心への羨ましさによるほっこりとした気持ちが同時に湧く。

今日紹介するRay Charlesのアルバム「Sings for America」も、そういった商品の一つだ。

レイ・チャールズのレパートリーからアメリカについて歌った曲を集めたコンピレーションアルバムだ。手元にあるCDを見ると2002年に発売されたアルバムのようだから、ニューヨークでの同時多発テロの後、愛国心が改めて高まっていく気運の中で企画されたアルバムだろう。あまつさえ「New York’s my home」という曲まで入っているのだから。

のっけから「 America The Beautiful 」という曲で始まり、もう、一気に愛国心をぶっつけられる。それも、レイ・チャールズがものすごく堂々と歌い上げるので、ちょっと気後れしてしまうぐらい、ちょっと赤面してしまうぐらいのインパクトである。友人から恋人との関係について赤裸々に語られているような感覚と言ったらいいか。そんな感じだ。

このアルバムは、こういう歌が何曲か入っている。まあタイトルが「Sings for  Amarica」だから仕方ない。ジャケットの写真にも星条旗が写っているぐらいだから。

しかし、どちらかというとアメリカそのものを歌った曲というよりも、アメリカを元気付ける曲、アメリカのあり方を問う曲も収められていて、単純にアメリカ讃歌に止まっていない。

例えば、18曲目の「 Sail Away」はランディー・ニューマンのカバーでアメリカへ奴隷を連れてきた際の物語を揶揄した内容の歌詞だ。アメリカはすごくいいところでみんな幸せで自由なんだと言って、人々を騙してアメリカへ奴隷を連れてきたんだよという内容の曲である。

それ以外にも、ビートルズの「Let it be」や「Over the rainbow」なんかも入っている。

「アメリカ万歳!」というだけのアルバムではない。

そういうこともあって、このアルバムは、アメリカのことが好きとか嫌いとかそういう問題と違うところで聴くことができる。聴いていて少し元気づけられるような選曲であるらしいし、そうでなくても歌詞の内容は関係なくレイチャールズの歌を心地よく楽しむことができる。彼のオリジナルアルバムは勢いがあるのだが騒がしいものや、ちょっと味付けが濃くてクドイものもあるので、アルバム一枚をきちんと聴くと結構疲れるのだが、このアルバムはいい具合にそれが分散されている。

意外なところでは「Take me home, country roads」が入っていて、彼のレパートリーの幅広さにあらためて感嘆する。

ちなみに、10トラック目はRay Charlesのアメリカに対するメッセージを兼ねたアルバムの解説が入っている。これは、わざわざ入れなくても良かったんじゃないかと思うけれど、まあ、仕方ないか。

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